１６０：女の勘 ページ41
『ホント仲がいいんだね？』
って口々に言う潤くんのお友達。
それに愛想笑いの私と…
「あぁ。お陰様で。」
いつもの様に私の腰を抱きながら、そう平然と返す潤くん。
「あ、ほら、ケーキがきた。」
そう言って…やっぱりいつも通り『あーん』する潤くん。
「フルーツ少ねぇな…。」
「ん…けど美味しいよ？」
「A好みじゃねぇだろ？」
『もっといちごが…』ってブツブツ言いながら、少しずつ切り分けたケーキを、私の口に運んでくれる。
時折、自分も食べて…
「やっぱ、俺がこの間買ったのが美味いじゃん。」
ってなぜか私に怒る。
ケーキも食べ終わり…
「潤くん？お手洗いいい？」
「あぁ。場所わかるか？」
頷き『失礼します』と潤くんのお友達に挨拶をして席を立った。
薄暗く細い通路の奥にお手洗いはあって。
女性用のドアを開けて、思わずため息をついた。
お手洗いという場所で…なんて思ったりもしたけど、妙な緊張感から解放されて…安堵のため息の後で、深く息を吸った。
あぁ…なんか…やっと一息つけた…。
用を足し、鏡の前に立ち、すっかり落ちたグロスを唇の上に落とす。
もう一度、深呼吸をしてドアノブを掴むと、不意に反対側からドアが開いた。
「…あら。」
ドアの向こうにいたのは、女優の…村上早希さん…。
「あ、し…失礼しました。」
ペコって頭を下げて、足早に横を通り越そうと思ったけど…。
「…ねぇ。」
…女って…なんでこういう時の勘って鋭いのかな？
「…はぃ。」
「…潤って…やっぱり誰にでも優しいのね？」
ワザと私の耳元で妖艶に囁く。
パッと彼女の顔を見ると、真っ赤な口紅を施した唇を、綺麗に弧を描きながら私をバカにした様に笑う。
「あなた…もしかして『自分は潤の特別だ』…なんて自惚れてるの？」
「…。」
「勘違いも甚だしいわね。笑っちゃうわ。」
大丈夫…大丈夫。
私は大丈夫…潤くんを信じてる。
「ねぇ？私に…潤を返してよ？」
突然、そんな事を言い出す彼女を思わず凝視する。
「あら？聞いてない？私と潤ね…昔、付き合ってたの。彼が１０代の頃だけどね？」
「…。」
「ふふ。私が潤の初めての女よ？私が潤に女の抱き方一から教えて『やめて下さい！』」
私の反応が嬉しいのか…やっぱりいやらしい笑いを浮かべる。
「…ふふ。考えといてね？お嬢ちゃん？…まぁ時間の問題かしら？」
私の肩をポンと叩くと、個室に入って行った。
私もお手洗いドアを開けて…潤くんの元に戻った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
