１５９：好み 〜J〜 ページ40
「潤くん！！」
摘まむって言っても…華奢なAの脇腹には、そんなに肉はないけど…。
「ん？」
「そんな所！やめてよ！」
「じゃぁ、どこならいいの？」
「ど…どこって…。どこもダメ！」
俺の手をパチンと叩く。
「ククク…お前…。」
「何よ！」
「いや…マジで可愛いな。」
笑いながらAの頭をポンポンすると、
「もう！」
怒りながら今度は俺の太腿を叩く。
A「なぁ…潤？」
「あ？」
A「満足か？」
「何が？」
A「そんだけイチャつけば今日は満足か？」
イチャつく？
どこが？
「いつもこんなんだけど？なぁ、A？」
Aの顔を覗き込むと、恥ずかしそうにはにかむ。
B「いつもそんなに…？」
「『そんな』って…どんなかわからねぇけど、家では、大体…腰か肩抱いて座ってる。」
C「仲がよろしいんですね？」
「えぇ、とっても。」
適当にあしらって、運ばれてきた酒を受け取り一つはAに手渡す。
「ありがと。」
「そんな甘くないし、強くもないから。」
俺もグラスを受け取ると、微笑んで頷くAの持つグラスにコツンと合わせた。
一口呑んだAが『美味し』って微笑む。
「だろ？お前の好みくらいわかってるしな。」
「私に合わせてくれたの？」
それには返事をしないで頭を撫でると、
「…ありがと。」
って柔らかく微笑みながら言う。
その笑顔を見る度に、俺は幸せな気持ちになって…Aを好きなって…。
「でも…よくわかったね？」
「当たり前だろ？」
「ん？」
「俺が一番Aの事はわかってんの。」
とにかくAの事は何でも知っていたい俺は、小さな所も見逃さない様に、常日頃から心掛けている。
「…ん、そうだね。」
「だろ？俺以上に知ってるとしたら…お前の両親くらいかな？」
「ふふふ。明日美もいるよ？」
「あぁ〜そっか。けど…俺も彼女の知らないニノ知ってるからおあいこだな。」
「それでおあいこなの？」
クスクス笑うA。
「あぁ。ファンでいてくれるお礼にニノの汚れた過去教えてやろっかな。」
「…それって、お礼じゃないし…ありがた迷惑よ。知らなくていい事も…あるでしょ？」
冗談として通じなかったのか、真っ直ぐ真剣な目を俺に向ける。
「…だな。」
『知らなくてもいい事』…か…。
Aから視線をずらしため息をつくと、視界の端に、友人と談笑する早希が映った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
