１５６：ご機嫌取り 〜J〜 ページ37
Aをソファに座らせる。
「A、ああいうのはちゃんと対応しろって言ってあんだろ。何回同じ事言わせるんだよ。」
「…。」
何か言いたげなAの視線。
「何？言いたい事は口で言え。」
「…。」
潤んだ目を隠す様に俺から顔を背ける。
やべ…キツく言い過ぎた…。
でもさ？俺の気持ちもわかってよ…。
気が気じゃないんだよ…。
小さくため息をつき、隣に座る。
「…A？ごめん。言い過ぎた。なぁ…こっち向いて。」
「…。」
「なぁ…？機嫌直してよ…。」
「…バカ。」
顔を背けたままボソっと一言。
「あぁ。俺が悪いな。」
「…電話したのに…。」
「…え？」
ソファに無造作に置かれた携帯…。
音を消してあったから気づかなかった…。
「ごめん。友達と話してて…。」
一方的に怒った自分がいたたまれない。
「…潤くんが悪い…。」
「あぁ。そうだな。ごめんな？」
「…ケーキ。」
「ん？」
「誕生日に買ってくれたケーキ食べたい。」
「食い切れねぇくらい買ってやるから、こっち向いて？」
ゆっくり振り返ったAは泣きそうなのを必死に我慢していて…。
「ここもケーキあんぞ？食べるか？」
「…ん。」
かろうじて頷いたA頭をポンポンとして、安堵のため息をついた。
Aにケーキをって思って正面を向くと、ニヤニヤ俺を見る友人達。
「…んだよ。」
A「いやね？そんな潤くん見れるなんて貴重だなって。」
B「ククク。必死で彼女のご機嫌取りをする潤…超貴重でしょ？」
C「いや〜楽しい楽しい。」
何も楽しかねぇよ。
「A？何呑む？」
「…潤くんと同じでいい。」
低い声でボソボソ言うA。
まだちょっとへそ曲がってんな…。
「おい、お前ら何してんの？」
遅れて来た友人がテーブルに近寄って来る。
B「ん？潤が彼女怒らせてさ？必死でご機嫌取りしてるのが楽しくて見学。」
「え？松潤の彼女？」
C「そ。美人でしょ？」
「あぁ。松潤には勿体無いな。」
笑いながら言うヤツを睨んでると『…潤くん？』ってAの小さな声。
「ん？何か食べる？」
「ううん。あ、あの…。」
「うん？何？遠慮しないで言って？」
A「潤…お前、その甘ったるい声どっから出してんだよ？」
「うっせ！お前は黙ってろ！」
煩い外野を一蹴して、Aを見る。
「あの人…俳優の…？」
「あぁ。中西陵。」
「やっぱり！」
「ん？どうした？知り合い？」
な…わけねぇか。
「ううん。ファンなの！」
はっ？！
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
