１２４：普通の男 〜J〜 ページ4
Aに向かって一直線に歩く。
あと１０メートルって所で男が俺に気付き、目を見開き立ち止まった。
「…水田さん？」
立ち止まった男を不思議そうに見上げるA。
やっぱコイツが…。
そんなAの正面まで行くと腕を掴んだ。
パッと俺を見上げたAは、状況が理解できてない様で…。
「…え？」
「帰るぞ。」
「あ？え？…潤くん？」
「Aは俺が連れて帰るんで。」
男に向かってそう言った俺に、『フッ』ってバカにした様に笑った。
「随分と余裕が無いんだな。…天下のスーパーアイドル嵐の松本潤さん？」
コイツ…。
「水田さん？！」
驚くAは無視で、お互いジッと睨み合う。
「…言いたい事はそれだけか？」
「…はい？」
俺の声があまりに低く掠れた所為か、聞き取れなかったらしい。
「だから…俺に言いたい事はそれだけかっつってんの。」
「え？俺が『中山さんください』って言ったらくれるんですか？」
「バカかお前…やるわけねぇだろ？」
「潤くん、バレたら大変だから…。」
キョロキョロ周りを見渡すAが俺の腕を引っ張って宥める様に言う。
「…わかった。」
Aにそう返事して、再度男に視線を向ける。
「これだけは言っとく。」
「何ですか？」
「俺はAを離す気は今もこれから先も無い。Aが俺の隣にいる間は…余裕なんて無くてもいい。てか！マジで好きなら余裕なんて無くて当たり前だと思ってる。」
きっと…ずっと俺はAの言動に一喜一憂して翻弄されっぱなしなんだろうなって思ってる。
「…俺は、きっぱり振られましたよ。あなたが『大好き』だと…。」
『はは』って自嘲的に笑ったソイツは、悲しげに目を細めた。
「アイドルも…普通に恋愛するんですね？もっと…派手に遊んでるのかと思ってました。」
「…あぁ。中には遊んでるヤツもいるけどな。けど、そんなのアイドルだろうがサラリーマンだろうがするヤツはするんじゃねぇの？」
「…ですね。」
「テレビに出たり、人前で歌うのが仕事なだけで、他は普通の男と何も変わらない。Aの前ではいつだってただの普通の男だ。」
頷くソイツは、
「人通りが少ないとはいえ…そろそろマズイんじゃないですか？」
って悲しげな目のまま俺に言う。
「あぁ。A…行くよ？」
「うん。潤くん先行って？」
頷き身を翻して車に戻る。
目を瞑りふーと息を吐き、ハンドルに額を押し付けAを待った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 404人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
