１４４：メリット ページ24
潤くんに借りた本を片手に昼休み社内を歩いていると、喫煙所にまどかと幸恵ちゃんを見つけた。
「まどか。帰ってたの？」
「えぇ。おととい。再来週にはまた行くわ。」
そう言うと、私から顔を背け、少し目を細めながら紫煙を吐いた。
「大変ね。」
「まぁ…仕事だし？」
それはそうだけど…ね。
ニューヨークまではフライト時間も長いし。
「お陰で、その辺の男よりよっぽど高給取りよ。」
喫煙所にいる男性社員が身を竦めた。
「まどか…。」
「まどかさん、だから何年も彼氏いないんですか？」
タバコを揉み消した幸恵ちゃんが、もう一本箱から取り出して咥えた。
「あんた…ズバッと失礼ね。」
「だって、まどかさんみたいな人って自分以上の男じゃないと認めなさそうで…。」
「あぁ〜そういう意味で？確かに…そうかもね？自分以下の男と付き合ったってメリットないし、面倒なだけ。」
「もぉ、まどか…。」
ストレートに言えるのが、まどかのいい所でもあるし、欠点でもある。
けど、YES、NOがはっきりしてる分ニューヨークでは受けがいいらしい…。
「まぁ？あんたの男以上の男はそうそういないわよ？」
「え？！Aさんの彼氏ってそんなにイケメンなんですか？」
「えぇ。私は好みじゃないけど。顔だけじゃなくて、それなりの高給取りよ。」
「まどか！」
お金の事はどうでもいいじゃない…。
大きな声で言った私を横目でジッと見て、
「首輪の次は手錠…。本当に独占欲が強い男。」
呆れた様にため息混じりに言った。
まどかも静香ちゃん同様目ざとい。
「まぁ、そこだけが欠点ね？私はそんな独占欲強い男…ごめんだわ。」
「えぇ〜いいじゃないですか。そんなに強く愛されたい。」
何か妄想してるのかうっとりした目をしてる。
「…大ちゃんに…。」
「『大ちゃん』？彼氏？」
「んもぉ！違います！嵐の大野くん！」
『あぁ』って納得してニヤリと私を見る。
何と無く居た堪れなくて、持ってた本で顔を隠すと、
「あ！やっぱりAさんは松潤ファンなんですね？」
って幸恵ちゃん。
「え？！」
どこ？どこでそう思った？
「その本の映画、今撮ってるんですよね？松潤。」
「え？！そうなの？！」
「はい。え？…知らなかったんですか？」
「あ？え？…ううん。知って…たわ…よ？」
…もうこの際、ファンだと思われた方がいいかも。
まどかはしどろもどろな私を『フッ』と笑って、新しいタバコに火をつけた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
