１２３：大きな愛 ページ3
「私…ずっとずっと…４年もの間…亡くなった婚約者を忘れられないでいました。」
「…え？」
突然過去を話し出した私を、水田さんが困惑の表情で見る。
「ずっとしてた指輪も…その彼からもらった婚約指輪で…。そんな私を…その彼ごと受け止めてくれたのが彼…潤くんです。」
「…。」
「どんな私でもいいって言ってくれて…。大き過ぎる愛で私を優しく包み込んでくれました。そんな潤くんだったから一歩前に踏み出せた。」
私にとって潤くんはアイドルじゃなくて…。
松本潤っていう一人の男の人で。
「はっきり言って私、嵐なんて…アイドルの松潤なんて全然興味がなくて。彼らの事なんて今だに名前くらいしかわかりません。」
アイドルの潤くんに興味はないし…テレビも見ない。
たまたま回したチャンネルに映ってる事はあったりするけど。
逐一チェックなんてしてない。
私にとって潤くんは…嫉妬心を丸出しにして、直ぐ不機嫌になったり…。
かと思えば私のキスで幸せそうに笑ったりする普通の男の人。
「…私、普通の恋人なんて望んでないです。普通の恋人ができなくても、潤くんと一緒にいれる事が私にとって全てなんです。」
泣きながら言う私を、ただただジッと悲しげな目で見つめていた水田さん。
「…彼が…潤くんが大好きで…。彼以外は絶対無理です。」
きっぱりと言い切った私を見つめてたと思ったら、『フッ』っと笑って頷いた。
「…わかった。」
「…。」
「ごめんな？」
眉を下げて言う水田さんに、首を横振る事しかできなくて。
「…俺はいつでも待ってるから、アイドルに飽きたらおいで？」
って背中をポンポンと叩いてくれて、『行こう』と促した。
少し前を歩く水田さんが、パッと立ち止まり私を振り返る。
「俺…けして君の外見だけに惚れたわけじゃないよ？」
「…。」
「営業先から帰ると、作業してても必ず『お疲れ様』って微笑んで言ってくれる君の優しさに惚れたんだ。」
「…はい…。ごめんなさい、失礼な事を言って…。」
「いや…いいんだ。そう思わせたのは俺だし…。でも…失敗したな…。もっと早くアプローチしとけばよかったな。」
苦笑いで言う水田さんが切なくて…。
「真っ向から向かってかなかった俺の…負けって事だ…。」
クルッと進行方向を向くとそう呟いた。
水田さんのほんの少し後ろを俯き加減で歩いていると、車のドアが何処で閉まる音を聞こえた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
