１３４：朝帰り ページ14
「Aさん！」
角を曲がった所で声を掛けられて振り向く。
「おはよう。静香ちゃん。」
「おはようございます。朝帰りですか？」
「え？！」
「車から降りた所バッチリ見ました。」
目を見開く私をニンマリ笑いながら見てる。
「あなた…だって駅は反対…。」
そう言いかけてふと見えた静香ちゃんの背後。
「あなただって朝帰りじゃない。」
「え？！あ！」
私の視線の方を向いて自分の彼氏に気づき、顔を赤くした。
「ふふ。自分の事は恥ずかしいのね。」
「もぉ！Aさん！」
ロッカールームに向かうエレベーターに駆け込んだ私と静香ちゃん。
無理やり乗ったギュウギュウのエレベーターで、『おはよう』って頭上から聞こえて、視線だけ向ける。
「…おはようございます。」
微笑んで頷く水田さん。
…それだけ。ただ…挨拶をしただけ。
エレベーターを降りてロッカールームに入ると静香ちゃんが、
「…Aさん？水田さん…。」
「うん。ちゃんとお断りしたわ。」
「そうですか…そうですよね！」
「私ね…今の彼じゃないとダメなの。他の誰かじゃ、あんなに安心して熟睡できない。」
「…Aさん。」
静香ちゃんには私の言いたい事の全てが、それだけで伝わっていて。
「すごいいい男よ？中身も外見も。静香ちゃんにお見せできないのが残念よ。」
暗い空気を取り払う様に、ワザ明るく冗談ぽく言う。
「えぇ〜、会わせてくださいよ。」
その空気を読んでくれて、静香ちゃんも明るく返してくれる。
「ふふふ。ダメ。いい男だから静香ちゃんが好きなったら困るでしょ？」
「なったとしても…Aさんから奪える自信なんて全くありません。」
「ふふふ。あげないわよ。」
制服に着替え終わって仕事場に向かう。
「私、お手洗い寄ってくから『あ！私も行きま〜す』」
鏡の前で受付に立つ為の最終チェック。
「Aさん！それ！」
私の左手首を指差す。
「ホント…目ざといわね。」
呆れを通り越して感心する。
「誕生日プレゼント。」
「それって…あの…ブルーで有名なお店の？」
「ん…だと思う。」
「『だと思う』って…。」
「箱ごともらったわけじゃないの。朝起きたらここにあったから。」
「カッコいい！ちょ〜カッコいい！もぉ！Aさんすごい羨ましい！」
目をハートにしながら大興奮の静香ちゃん。
こういう演出…好きだもんね。
「だから言ったでしょ？いい男だって。」
頷く静香ちゃんと今度こそ仕事場に向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 404人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
