１３１：大丈夫 〜J〜 ページ11
シャワーを浴びる前に眠ってしまったA。
よっぽど怖かったのか、寝ていて無意識でも俺にしがみつく様に背中に腕を回されていて。
シャワーを済まそうとゆっくり、Aを起こさない様に腕を外して上半身を起こす。
顔にかかっている髪を後ろに流して、ジッとAの寝顔を見つめる。
「…かわい。」
思わず笑みがこぼれる程可愛い寝顔。
俺だけしか見れないA。
頬にチュッとキスを落とすと、Aが微かに笑った気がして。
シャワーに行こうと思ったのに…完璧Aから離れられなくなった俺。
布団の中に逆戻りして、再び腕の中にAを戻す。
今度は前髪をかき分けて額にキス…。
Aに落とすキスひとつで俺はこんなにも満たされて…こんなにも幸せな気分になる。
唇を離して見つめたAの寝顔…。
この可愛い寝顔をずっとずっと見ていたい。
Aにとって安心できる存在でいたい。
Aにいつでも幸せを与えられる男でいたい。
Aを更に抱き寄せ、目を閉じ深呼吸すると、微かに香るAの香り…。
うん…やっぱり…。
Aを抱きしめていると、ふと思い出した。
再度、Aを起こさない様にゆっくり腕を外して…今度こそベットから出た。
・・・Aの携帯のアラームが頭上で鳴り響く。
「…ん…。」
手をまさぐって携帯を探してるA。
「A…こっち。」
俺の頭上にあった携帯を取り手渡すと、Aが画面を操作してアラームを止めた。
「おはよ…潤くん。」
「ん…はよ。」
お互い寝ぼけ眼のまま視線を合わせて、どちらからともなくチュッと唇を合わす。
「…シャワー…。」
のそのそと起き上がろうとするAを『もうちょっと』って引き止め、額に唇をくっつける。
「ごめんね？早く起こしちゃって。」
「…いや。俺の我儘で来てもらったんだし。」
「今日も映画？」
「…あぁ。」
映画の撮影も佳境で…。
俺の仕事の事は詳しく聞いてこないA。
…興味がないだけかもしれないけど。
だから…多分…コテコテなラブストーリーだって事は知らない。
キスシーン…お姫様抱っこ…チャリ二人乗り…。
知った所で、Aも大人だし仕事は仕事だと割り切ってくれると思う。
「今日も遅いね？」
「…あぁ。」
「無理しないでね？私なら大丈夫だから。」
「お前の『大丈夫』ほど大丈夫じゃないもんはねぇ。」
素直に寂しがってくれたのが、よっぽど気が楽だ。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
