１２２：恐怖 ページ2
声のした方を振り返ると水田さん。
「…お疲れ様です。」
「お疲れさん。ちょっといい？」
それだけ言うと立ちすくむ私の前まで歩いて来て、目立たない場所に移動した。
「…俺じゃダメ？」
「え？！」
水田さんの突拍子もない言葉に唖然となって、ただただ水田さんを見上げる。
潤くんよりも背の高い水田さん…。
見上げる角度がいつもと違う。
「俺じゃぁ…彼は越えられない？」
「…はい。」
「俺…彼より中山さんを大事にできる自信があるよ？」
そんな事ない…。
潤くんは誰より私を大切にしてくれる。
「そんな『アイドルだから？嵐だから？松本潤だから？』」
「…！！」
思わず言葉に詰まる。
「君程の女の子を堕とした男ってそれなりの男だと思ったけど…まさかね…。」
「…ど…どうして…？」
一番恐れていた…。
その事に恐怖を感じて声が震える。
もう…潤くんとは一緒にいられないかもしれない。
その事実に途轍もない恐怖が私を襲ってくる。
「…やっぱり…。」
「ねぇ？どうして？！」
水田さんにバレる様な事なんてしてない。
「…俺…どうしても君を諦めきれなくて…。」
そこまで言って口を噤んで俯いた。
「…水田さん？」
黙り込む水田さんをジッと見つめた。
『ふー』っと息を吐いた水田さんが、俯いた顔を上げて私を見据えた。
「…君の家まで行った。ごめん…調べた…。」
「え…？」
「そして…君の部屋のドアから出て来たのは…間違えなく…嵐の松本潤だった。」
「…。」
…。
もう無理だ…。
潤くんとは一緒にいられない。
その事実を突き付けられて涙が溢れる。
「…泣かないでよ…。」
水田さんに手を引かれて更に人気のない路地の奥に入る。
「…教えて…くれないかな？」
水田さんの予想外の優しい言い方に俯いてた顔を上げた。
「どうして…どうして彼なの？彼らの世界の事はよく知らないけど…普通じゃない事くらいわかる。」
つまり…普通の恋人で居られないって事…？
「君程の女の子なら、わざわざ彼でなくても…。」
それは違う。
私にとって潤くんはアイドルじゃない。
「…私は…彼じゃないとダメなんです。」
「だから…どうして？」
「それはきっと…水田さんには理解できません。」
「そんな『あなたは！』」
大きな声で叫んだ私を口を噤んでジッと見つめた。
「…あなたは…所詮…私の外見だけ…。」
そう呟いた私に水田さんは悲しげ目を向けた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
