５：ピンクのハンカチ 〜J〜 ページ6
ニノの後について入った店。
薄暗い店内には、微かに聞こえる程度にクラッシックがかかっていて。
カウンター５席と４人掛けのテーブル席が２卓の小さな店。
入口に背を向ける様に座っていた髪の長い女の子が振り返ると、
「和也。」
って嬉しそうに笑った。
そんな彼女を見て顔をほころばせるニノ。
…あ、コイツマジで本気だって、その表情でわかる。
「ごめん。撮影、ちょっと長引いて。」
彼女に歩み寄るニノの後ろを、店内をキョロキョロしながらついてく。
店内を物色する様にキョロキョロと視線を巡らせていると、化粧室があると思われる扉から出て来たひとりの女の子。
俯き加減で、長いストレートの髪が顔にかかってて表情まではわからない。
けど、何となく惹かれるものがあったのか…。
その女の子から視線を外せないでいると、少し顔を上げたそのコは、ピンクのハンカチで手を拭き、左手をすっげぇ柔らかい優しい表情で見つめたかと思ったら、薬指に輝く指輪にキスをした。
その仕草、笑顔…一連の動作に…。
見惚れて動けない。
「J？」
俺の異変を察知したのか、ニノが訝しげに俺の顔を覗き込む。
「…あ……いや。何でもねぇ。」
焦って適当に返した所で、コイツにはお見通しだろうけど。
「そ？こちら明日美ちゃんね？」
「あぁ…。松本潤です。」
一応、頭を下げる。
「はい。存じ上げております。お会いできて光栄です。」
「あ、こちらこそ。」
そんな返事をしても、さっきの彼女が気になって、意識は完全にそっち。
「J？座って？ビール？」
「あぁ。何でもいい。」
ニノと彼女に気付かれない様に…とは言ってもニノには気付かれてんだろうけど。
さっきの彼女を視線だけで探す。
あれ？いない？
思わず身体ごとパッと後ろを振り返ると、視界いっぱいにさっきの彼女が着ていた服が飛び込んで来る。
「A？彼と彼の友人？仲間？」
「んふふ。どっちでもいいよ。」
俺に話すのとは全く違う柔らかい口調のニノ。
てか、そんなのはどうでもよくて…Aさんて言うのかぁ。
なんて思ったり…。
「驚いた。本当に嵐だったとはね？」
あ、声も柔らかい優しい声だ。
「え？！私の事嘘つきだと思ってたの？」
「ううん。そんなんじゃないけど、普通信じないでしょ？」
「一応？本物ですよ。」
なんてニノが言ってる。
そのAさんが俺の正面に座って、
「中山Aです。」
って微笑みながら言った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
