３３：心から 〜J〜 ページ34
Aさんが鼻を啜る音だけが部屋に響いて。
「Aさん、今日も泣き過ぎでしょ？」
「じゅ…んの…せぃ……もん。」
ヒックヒックとしながら途切れ途切れに言うAさんが可愛いくて。
「ねぇ…？今日も一緒に寝ていい？」
頷くAさんの背中をポンポンってしてやって落ち着くのを待つ。
ヒックヒックも治まって…身体を少し離すと、俺のシャツもAさんの顔も涙でぐしょぐしょ。
「…ごめ…。」
「いいよ？気にしないで？それよりシャワー借りてもいい？」
「…うん。…着替え。」
「あ、この間のでいいよ？」
頷くAさんがクローゼットから出したのは、スエット生地の上下。
…大河さんの。
Aさんの中の大河さんは一生消す事はできないし、それごとAさんを思うって決めて、告白した訳だから…。
亡くなった人にはどんなに頑張っても一生勝てないし。
むしろ思い出のこの服を俺が着てもいいのだろうかって、俺の方が躊躇して。
「下着は洗っといた。」
そう言ってスエットの上に、俺が置いてった下着を恥ずかしそうに顔を赤らめながらのせる。
「ねぇ？やっぱさ？服も下着もいらないかな？タオル一枚で出て来ようか？」
そんなオンナノコなAさんが可愛いくていじめたくなる。
「っ〜//もう！バカ！」
俺に服と下着を投げつけた。
「あ！ひでぇ。」
「どっちがよ！！」
「ふふ。ごめんごめん。」
服と下着を拾い集めて、『ごめんね』って耳元で囁き、そのまま頬にキスをして頭をポンポンってしてからバスルームに向かう。
「っ〜//もう！ずるい！」
ドアを閉める背後でAさんのそんな声が聞こえて、自分でもわかる程顔がほころんだ。
正面の鏡に映る俺はやっぱりデレデレで。
引き締めた顔を作ってみるけど、やっぱりどこか違って。
シャワー終えて部屋に戻ると、コーヒーのいい香り。
「今日はインスタントじゃないよ。」
って微笑むAさん。
「あ、こんな時間に…コーヒーってダメだった？」
「ううん。大丈夫。ありがと。」
それにはニッコリ笑って答えてくれる。
それが初めて見た心からの笑顔な気がして…すっげぇ嬉しくて、胸がキュッてなって。
…思わず抱きしめる。
「潤くん？」
「笑ってくれた。」
「ん？」
「Aさんが笑ってくれて嬉しくて。」
俺が笑わせたって事実もハンパなく嬉しくて。
「潤くん？」
「ん？」
「…ありがと。」
それに答えるように、抱きしめる腕に力を込めた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
