３２：真実 〜J〜 ページ33
なんか…もうね？
そういうギャップにかなりやられちゃってんだよね。
「もぉ〜…何？」
「『何？』って何がよ？」
まだ拗ねた口調のAさん。
「すっげぇさ、綺麗なのに所々可愛いくて。ずりぃ。」
「ん？意味わかんない。」
「…俺はAさんが大好きだって事。」
そう言って頬にチュッてわざと音をたててキスをすると、真っ赤な顔の頬を手で押さえながら俺を見上げてる。
「そういう所、すっげぇ可愛いよ？」
耳元で囁くと、
「〜っ//」
両手で頬を押さえてその場にしゃがみ込む。
「Aさん？」
「…潤くんのがずるい！」
「ふふ…そ？」
「そういう余裕がある所とか…もう…ずるい！」
「…余裕なんて…ねぇよ。」
マリンブルーのラグの上に座り込んでるAさんを抱き上げる。
「え？！ちょ！潤くん？」
「Aさんを好きになってから…俺、余裕なんて全くと言っていい程ねぇよ。情けなけねぇけど。」
Aさんをゆっくりベットの上に乗せるとギィっとベットが軋む。
俺もベットの上に乗っかり、Aさんと向き合う。
「この先…Aさんと一緒にいる事に慣れたら余裕って生まれんのかな？」
「…え？」
「でもさ？俺…Aさんが俺のでいてくれる間は余裕なんていらねぇわ。そんな余裕はいらねぇ。」
「…ん。」
目の前のAさんの手をギュッと握り、視線だけをテレビに向ける。
「あんな画面の中の俺じゃなくて…余裕もなくて情けない俺だけど、ここにいる俺が本当の俺で…。」
「ん。」
「Aさんの前では、どんなに情けなくても本当の俺でいたい。だから…Aさんも我慢しないで、本当のAさんを見せて？」
頷くAさんに、
「もう一回聞くね？」
って言うと、俯いてた顔を上げて、少し首を傾げて俺をジッと見る。
「寂しかった？…会いたかった？」
「うん。」
目を潤ませて頷くAさんに、手を広げて『おいで？』って言うと、俺の胸に飛び込んできて、ギュ〜ッて抱きつくから、俺もキツく抱きしめ返す。
「じゅ…く…。」
「ん〜？」
「こわか…た。嘘じゃ…夢じゃないかって。」
「全部真実。」
「…す…き。」
Aさんの震えるか細い声は、ちゃんと俺にも届いて。
「俺も…大好き。」
もらえるとしたら、ずっとずっと先だと思ってたAさんの『すき』。
『すき』ってたった二文字が、俺を半端なく満たしてくれて。
もう…ホントにマジで…俺はそれだけで生きてけるって本気で思った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
