３１：自惚れ 〜J〜 ページ32
１０日ぶりくらいに見るAさんは、ノーメイクでもやっぱり綺麗で。
唖然と俺を見上げるAさん少しだけ幼く見えて可愛い。
靴も脱がず衝動のまま抱きしめた。
Aさんの首筋に顔を埋めて、深呼吸を繰り返す俺に、
「潤くん？」
って遠慮がちに呼ぶ声。
「ん？もう少しココにいて？」
「でも…とりあえず…。」
…そっか。まぁ、そうだな。
ゆっくり身体を離して、腕を緩める。
靴を脱いで上がったAさんの部屋。
テレビの画面には俺らのDVDのメニュー画面がついたまんまで。
気まずそうな顔をして逃げる様に、
「コーヒーでよかった？」
ってキッチンに向かうAさんの腕を咄嗟に掴む。
「ううん。いらないから…もう少し抱きしめさせて？」
Aさんの返事を聞く前に自分の腕の中に収めて、甘い匂いに誘われる様に首筋に顔を埋める。
「ねぇ…？会いたかった？」
「…。」
「俺に会いたかった？…寂しかった？」
「…。」
「俺だけじゃないって自惚れてもいい？」
「…。」
「ねぇ…返事してよ。声聞かせてよ…。」
抱きしめる腕に力を込めて…『泣かないでよ…』って呟く。
「Aさん？」
返事の代わりに、俺のシャツをギュッと握る。
「寂しい思いさせちゃってごめんね？」
俺の胸に顔を埋めたまま首を振るAさん。
「俺…いい加減限界。」
Aさんの頬に手を添えて強引に上を向かせる。
目を見開き、びっくりしているAさんを無視して、そのまま唇を押し付けた。
唇はそのままでゆっくり目を開くと、まだ驚いている様子のAさんと目が合う。
状況を理解したのか、恥ずかしそうな目を俺から逸らすと、ゆっくり目を閉じた。
それを見届けた俺も、もう一度目を閉じる。
何度も唇を合わす角度を変えて、Aさんの甘く柔らかい唇をじっくり堪能して、ゆっくり唇を離す。
「…酒呑んでた？」
「ん…。」
「かなりキツイ酒じゃない？」
「うん。」
酒に逃げる程、寂しい思いさせてたのかって思うとすっげぇ切ないけど、どっか嬉しい俺。
「何で笑ってるの？」
鼻声でそう言ったAさんが、俺を恨めしそうに見上げる。
「何でだろ？」
「もう…何それ。」
本格的にいじけたらしいAさんが、俺から離れようとするから、腕を掴む。
「いじけんなよ。」
「いじけてなんて『んじゃ、拗ねてんの？』」
顔を覗き込むと、プイと俺から視線をずらした。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
