３：幸せになる権利 〜J〜 ページ4
「そんなさ？自己犠牲ばっかしなくてもいいのよ？」
ってニノが言う。
「そんなつもりはねぇよ。」
それは本心。
末っ子と言えども、俺もニノも来年には３０。
だから余計に軽々しい付き合いはできない。
…したくない。
『運命』なんてもんは信じちゃいないけど、俺はもう軽々しい恋愛はしたくない。
そういう相手に出会ってないだけ…。
「勿体無いねぇ〜。Jモテんのに。」
背凭れに寄り掛かり、窓の外を見ながらニノの言葉を受け流す。
「俺が女だったら、嵐の中では間違いなくJ選ぶのに。」
「気持ち悪りぃ事言うなよ。」
「え？本心ですけど？Jみたいな一途で、純真な男に愛されたら、女冥利に尽きるでしょうよ。」
やっぱりどこか、面白そうに言うニノ。
「３０近い男が純真かよ…。」
乾いた笑いと共にニノに言うと、
「いくつになっても潤くんはそのまんまでしょ？」
って言った。
「……。」
「真っ直ぐ過ぎるのよ。真面目過ぎのかな？」
「んな事ねぇよ…。」
ボソっと呟く様に言った俺に、
「潤くんにも幸せになる権利あんのよ。」
って珍しく優しい口調で言うから、思わずそちらに顔を向ける。
「何よ？」
「あ、いや…。」
「ニノちゃんだってたまにはいい事言うのよ？」
って『ふふ』って自嘲的に笑う。
「…『幸せ』か…。」
「はい？」
「『幸せ』って何だろうな。」
それだけ言って再び窓の外に視線を向けた。
俺が言った言葉にニノは答える事はなくて。
俺の『幸せ』って何だ…？
仕事の面では充実してる。
でも、それは仕事以外の物を切り捨てて、がむしゃらに突っ走ってきたからだと思ってた。
てか、そう思う様にしていた。
そうしなければ、アイツを簡単に切り捨てた自分を許せないから。
「きっとあのコも潤くんの幸せ願ってんじゃない？」
って…。
「…どうだろ。サイテーな男って思われてんじゃない？」
「…ねぇ？」
ニノの声が低くなった…。
「あ？」
「潤くんが大好きであんなに大切にしてたコって、そんな事思う様なコ？」
「……。」
「違うでしょ？違うから引きずって、後悔してんじゃないの？」
「…。いや、マジで引きずってはねぇよ。」
「なら『何もできなかった自分に後悔してる』」
俺がアイツと別れて３年。
その間、彼女どころか好きな女の子もいなかった。
もうあんな思いしたくないって、無意識に予防線を張っていたのかもしれない。
けど…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
