２７：人気者 ページ28
近年ないくらいウキウキな気分で出勤する。
私は所謂OL。
社員が３００人くらいの会社での受付が私の仕事。
「Aさん？上機嫌ですね？」
ロッカールームで後輩の静香ちゃんに言われる。
「ふふ。そ？」
「ええ。いい事あったんですか？」
「うん。とっても。」
潤くんはやっぱり真っ直ぐな人で…嘘偽りない気持ちを私にぶつけてくれた。
あんなキラキラアイドルが自分の彼なんて今だに信じらんない。
「本当にAさんって綺麗ですよね〜。」
何て質問とは全く関係ない言葉。
「何言ってんのよ。」
「いえ…普段から美人なんですけど、今日更にオーラが…。」
「芸能人でもあるまいし、オーラなんて存在しないわよ。」
そうよ…オーラがあるって言うのは潤くんみたいな人の事を言うのよ。
「その芸能人でも滅多にいないくらい美人です。」
「褒めてもランチは奢らないわよ〜。」
静香ちゃんを軽くあしらってロッカールームを出ようとしたら、
「ねぇ〜また嵐のコンサートハズレた〜。」
って声が聞こえた。
『嵐』に反応して、思わず足を止める。
「もう３年連続当たってないよ。」
「大人気だもんね。ネットで１５万で出てたよ？」
そんなに人気者なんだ…。
嵐…というか芸能人とかアイドルに全く興味がなかった私には初めて聞く事実で。
…昨日は勢いっていうか…潤くんの真っ直ぐな気持ちが嬉しくて、深く考えずにオッケーしちゃったけど…本当にいいのだろうか？
潤くんはやっぱりスーパーアイドルだって事を今更に認識して…怖くなった。
「Aさん？」
立ち止まる私の顔を覗き込む静香ちゃん。
「ん？何でもないわ。さて、仕事、仕事。」
無理に明るく振舞ってロッカールームを出た。
・・・私の部屋に突然やって来た明日美。
私と潤くんの事を聞く事もなく…。
私の部屋に入るなりDVDをセットして再生し始めた。
テレビに映ってるのは潤くんで…嵐さん。
どうやら国立競技場でのコンサートのDVDらしい。
話す事もなくジッとテレビを見つめる明日美に聞いた。
「ねぇ？明日美はさ？」
「うん？」
「怖くないの？」
「ん？」
『どういう事？』って目を私に向ける。
「私ね？ほら…芸能人とか興味なくて。」
「うん。」
「この間、会社で女の子が『３年連続チケットハズレた』って言ってて。」
「うん。」
「そんな人気者が私と…私なんかと…って。」
語尾が段々小さくなって…俯いた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
