２２：器 〜J〜 ページ23
「そんだけの器が自分にはあるって自信はあるのか？」
マスターの言わんとする事も、彼女の『助けて』も全然理解できなくて。
智「松潤？」
「ん？」
智「もうさ？頑張らないで諦めるのはイヤだって…そう思ってたんじゃないの？」
「…あぁ。」
確かに思ってた。
智「んじゃぁ、いっぱい頑張らないとね？」
ふにゃって笑って言ったリーダー。
「潤。」
「ん？」
「Aのな…？旦那…いや、旦那になるはずだった男は４年前に亡くなってる。」
「っ！！」
思わず息を飲んだ。
「事故でな？呆気なく…。Aはそれをまだ正面から受け入れる事ができないんだよ。」
ニノの彼女が嗚咽を漏らし泣いているのを、どこか他人事の様に見ていて。
そんな彼女を優しく抱きしめるニノも、どこか違う世界から見ている感覚で。
「ね？Aを助けて？」
彼女は俺にそう言うけど、俺はどうしたら…。
Aさんに旦那がいなくてラッキーだったとか、そんな事は少しも思わなくて、ただただAさんの悲しみや苦しみが痛くて。
「モルディブで式を挙げる予定だったんだ。」
あぁ…だから…。
「Aは、大河を…思い出にして生きて行く事が悪い事だと思い込んでてな。それは違うのに…俺の言う事なんて聞きやせん。」
「俺は…俺に…？」
「お前ならって俺は思ったけど…それは過剰な期待だったか？」
「…いや。」
ずっと思ってた。
何であんな寂しそうに笑うのかなって。
あんなに美人なんだから、心の底から笑ってんなら、もっともっと綺麗なんだろうなって。
そして、その笑顔を見たいなって…俺が本当に笑わせてやりたいなって。
「Aは見ての通りの外見で。それだけで寄ってくる男なんてたくさんいて…けど、アイツの素っ気なさと指輪で大概男は諦める。」
まぁ…普通はそうだろうな。
「俺が見る限りお前が初めてだよ。Aに正面から真っ直ぐぶつかって行った男は。」
雅「松潤！頑張ってよ！今じゃないの？今、頑張る時じゃないの？」
和「俺もそう思う。」
智「松潤？」
俺を呼ぶリーダーの優しい声。
智「幸せって自分で掴むモンだよ？待ってても幸せからは歩いて来ない。」
……やっぱすげぇや大野智。
「明日美さん？」
俺が名前を呼ぶと、ニノの胸からゆっくり顔を上げる。
「Aさんの家…わかるなら教えて。」
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
