２１：不倫 〜J〜 ページ22
４人がけのテーブルに隣から椅子を持って来たニノ。
マスターがドアに向かって行った事で、店を『CLOSE』にしてくれたんだって理解した。
やっぱり微かにクラッシックが聞こえる店内でマスターがシェイカーを振る音だけが鳴り響く。
「先に俺が言ってもいいかな？」
「はい。」
彼女は頷いてくれて。
「『迷惑』だって。」
俺の掠れた声は聞き取りにくかったらしくて。
「…え？」
ギュッと目を瞑り、深く息を吸ってもう一度彼女の目を真っ直ぐ見て言った。
「俺の気持ちは『迷惑』だってハッキリ言われたよ。告白した訳でもねぇのに。まぁ状況がな…しょうがねぇよな。」
「…そんな。」
泣きたいのは俺の方なのに、彼女の目が潤んで泣きそうで。
「で？明日美さんは？俺に何か…？」
「…はい。あの…こんな話し聞いた後に聞くのは…」
「大丈夫。プライドもAさんへの気持ちも…俺にはこれ以上捨てるモンなんてないよ。」
フッと自嘲的に笑って言った。
「Aの事今でも…？」
「あぁ。そんな簡単に忘れられるくらいだったら、最初っから他の男のモンってわかってる女の子なんてわざわざ追っかけないでしょ？」
雅「え？松潤どゆ事？」
俺と彼女…ニノをキョロキョロ見て必死に状況を理解しようとしている相葉くん。
智「だから、ニノは頑なに言わなかったんだ。」
リーダーは全てを理解してニノを見る。
ニノは悲しそうな目をして頷くだけ。
「なら…Aを助けて下さい。」
俺に涙をいっぱい溜めた目を向けて縋る様に言う。
「『助けて』って…？」
「…マスター？」
ついにこぼれた涙を拭う事もしないで、マスターの方を向く。
その涙をニノが指で拭ってやってると、マスターが酒を運びこちらに向かって静かに歩いて来た。
「潤？」
「何？」
「お前、どんなAでも受け止めるって覚悟はあるか？」
「え？どういう事？」
「あるか、ないか聞いてるんだ。」
俺の質問には答えないで、その答えだけを俺に求める。
「…あるよ。不倫っていうタブーを冒してまでこんな世界で生きてる俺と一緒にいて欲しいって思ってるんだ。そのくらいの覚悟はあるよ。」
『不倫』って言葉に相葉くんが固まったのが視界の端に映る。
「そうか…。お前がAを受け止めるって事はだ…二人分受け止めるって事だ。」
「二人分…？」
旦那とって事か？
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
