１９：マリンブルー ページ20
「A…いいのか？」
一部始終を聞いていたであろうマスターがカウンター裏から出て来る。
私が『迷惑』と言ったら松本くんは、すくっと立ち上がり、お金をカウンターにそっと置いて無言で出て行った。
「いいのよ…。」
「だったら…何で泣いてんだ？」
「泣いてなんかないわ。涙なんて４年前に枯れ果てたわよ。」
精一杯の強がりを言い、涙を拭う。
「そうか…もう４年か。」
そう呟いたマスターが、やっぱりマリンブルーのカクテルを新しく作って差し出す。
「大河は今のお前見たら何て言うだろうな。」
「さぁ？褒めてはくれないかもね…。」
「お前…潤の事『そんな訳ないでしょ？余計なお世話よ』」
虚勢を張っても父親と同じくらいの歳のマスターには全部お見通しで。
「だったら、何でここに通ってたんだ？それまでは月１顔見せるか見せないかだったのに…。」
「たまたまよ…。」
「俺は、お前がどこの誰とどうなろうと知ったこっちゃないけどな…ただ…。」
マスターが言葉を詰まらせるから気になって、マリンブルーのグラスから視線をマスターに向ける。
「…ただ？」
「大河が笑っていられるお前でいろ。」
その一言がズシンと心に重く響く。
「今の私じゃダメって事？」
「そんなのお前が一番よくわかってんじゃないのか？」
それには返事はせずにカクテルを呑み干し、お金を払おうと声をかける。
「お前の分も潤が置いてったわ。律儀なヤツ…。」
「…そう。」
席を立つ私をマスターが心配そうな目で見ていて、その目から逃れる様に背を向けた。
・・・こんな私とずっと親友でいてくれた明日美。
明日美は柔らかい笑顔が印象的で、性格もとっても素直な、同じ女として羨ましいと思える可愛い思える女の子。
私とは正反対…。
そんな明日美が『彼ができた。』と私に打ち明けた。
その可愛いさと、素直さ故に男に騙された事もあった明日美からの久々の報告に私も嬉しくなった。
冗談だと思ってたのに、まさかの本物嵐。
また騙されてんじゃないかって心配になったけど、二宮さんの明日美を見る目を見てたら大丈夫だって安心できた。
そんな二人を見てると感じる視線。
真っ直ぐ偽りも濁りもない綺麗な目で私を見ている松本くん。
そんなに詳しく…名前くらいしか嵐は知らないけど、勝手にこの人はチャラいって言うか遊んでるんだろうなって思ってた。
でも、その目は私のそんなイメージを払拭したんだ。
そして…その目に…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
