１５：失恋パーティー 〜J〜 ページ16
なんだか、妙にスッキリした気分。
Aさんと俺の距離はちっとも縮まってないのに、すっげぇ清々しかった。
自分の気持ちをちゃんと真っ正面から受け止めて、ニノにそれを話した事で少しだけ前に進めた気がした。
ニノはきっと俺がAさんへの道を、どうにかしてくれないかと頼むモンだと思ってたと思う。
あのリアクションはきっとそうだろう。
確かに、Aさんに通じる道はニノ…ニノの彼女しかないんだから。
けど、何でかそこに縋りたくないって思って…。
そこしか縋る所もないのに。
そこしか、Aさんには繋がらないのに…。
根拠はないし、運命なんてもんは信じちゃいないけど、何となく…あの店で会える気がしたんだ。
まずは自分でどうにかしてみたくて…。
指輪の真相もちゃんと自分で確かめて、受け入れたい。
薄暗い自宅のソファに座ってビールを呑みながら、自分達のライブのDVDと今回のコンサートの資料を見比べる。
資料をめくる音と、ライブの音だけの部屋に携帯の音が鳴り響く。
携帯…どこやったっけ？
音が鳴る方に向かい歩くと、コートの中から聞こえる音。
ポケットから取り出し表示を見て、小さくため息をつき画面をタップした。
「はい…。」
ーあ…J？
何となくそんな予感はした。
「ん？」
ー…あのさ『ニノ？』
「俺…さ？とりあえず自分で頑張りたいんだ。」
ー…はい。
「もし…もしさ？ん〜…何て言ったらいんだ？」
ーJ？
「もし…俺が頑張りきれなかったら、そん時は頼む。」
冗談ぽく笑いながら言ったらからか、
ーふふ…Jっぽくない弱気な発言ですね。
ニノもニノらしく返す。
「だって…お前…さすがに怖ぇよ。Aさんの事何も知らない訳だし。」
ーですね。けど…進むんでしょ？
「…あぁ。」
ー失恋したら皆でパーティー開いてあげますから。
「おま…冗談でも、今から頑張ろうってヤツに言うセリフじゃねぇだろ？」
ーんふふふ。
電話の向こうのニノはすっげぇ面白がっていて。
ー明日美にも当分…伏せときます。
「そうしてくれると助かる。突っ込む前に避けられたら、俺もさすがにヘコむから。」
ーふふ。でも…どうしても俺が見てらんない時が来たら…『わかってる。』
仕事に支障をきたす訳にはいかないから。
ーんじゃ…健闘を祈ります。
「あぁ。」
同時に電話を切った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月22日 13時
