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やっと涼太から解放され呼ばれるまで控室で待つ間、壱馬くんのことが気になってしまって、手に持つ台本は開いたまま飾り同然。
いつもニコニコしてて元気だから余計心配になってしまう。
「登坂さん、そろそろ準備お願いしまーす。」
『あ、はい！』
結局、全く台詞の確認も出来ずにもうすぐ撮影開始の合図。
次はAと竜の二人のカット。貴族側へ行ってしまった誠一郎への恋心を胸に秘めるAの背中を、竜が押してくれるという設定。
何度かリハを重ねていよいよ本番が始まった。
丁度ドリーと奏の決闘の前日。明日に向けて必死で練習をする奏と元に黙って、一人公園のベンチに腰掛け、誠一郎のことを考えているAのところに、竜がやってくる。
竜「いつまで時化た面してんだよ。」
『…別に、そんな顔してません。』
竜「あんた、好きなんだろ？久遠さんのこと。なら素直になりゃいいのに。」
『だって、誠一郎は私のこと、妹みたいにしか思ってないから。素直に気持ちを伝えたって結果は分かってる。』
竜「そんなん言ってみなきゃ分かんねえじゃん。」
『分かる！っ、それに、言ったら戻ってきてくれなくなる。今までの関係だって、壊すことになる。伝えないことが、みんなの為なの。』
奏の妹であるAを、自分の妹のように想ってきてくれた誠一郎に、想いを伝えるわけにはいかない。
戻ってきてくれた時は今までのように、少し口煩い兄として接してもらうことが、みんなが幸せへ続く道なんだと、Aはそれが正しいと思っていた。
竜「壊れたらまた元に戻せばいいんじゃねえの？」
『出来るわけないじゃない、そんな簡単にっ！』
竜「じゃあ諦めれば？大した覚悟もねえみたいだし。ああ、お嬢様には泣き寝入りがお似合いかもな。」
『…っ、』
竜「で、どうすんの。諦めんの？」
『そうするしか、ないもん…。』
竜「へえ。なんだ、そんな簡単に諦められるくらいのもんだったんだな、あんたの久遠さんを想う気持ちって。」
『そんなんじゃ、っ！』
竜「大体なんだよ、みんなの為って。人のせいにしてただあんたが逃げてるだけだろ。」
『そんなことない！』
竜「やっぱお嬢様ってのは自分のことばっかりなんだな。」
演技だと分かっていても、竜である壱馬くんの放つ言葉や表情に、胸が締め付けられる。
そして、散々な言われ様に悔しさが募り、Aは涙を流しながら竜の頬を叩いた。
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卯月(プロフ) - 初めまして♪aloaさんの作品全部、読ませていただいてます！塩野さん関連の作品はあまり無いので繰り返し読んでいます！これからも更新を楽しみにしています！ (2020年9月6日 11時) (
レス) id: 686cae3491 (このIDを非表示/違反報告)
aloa(プロフ) - 彩華さん» コメントいただきありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです♪これからも更新頑張りますので、今後とも是非宜しくお願い致します！ (2020年6月15日 1時) (レス) id: fdd25be30d (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 前回の作品から見てます！塩野くんの作品はなかなか無いのでとっても嬉しいです！これからも応援してます＾＾ (2020年6月14日 1時) (レス) id: 303c26c9ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aloa | 作成日時：2020年6月10日 16時
