ボウリング場にて ページ44
＊
────────カンッ、
────────カンッ、
硬いボールが床を転がって、
ピンが跳ねる音に混じって、高らかな笑い声が
あちらこちらから聞こえてくる。
耳からは、そのうるさい程の音たちが
聞こえてくるのに、わたしの頭の中では、
ずっと須田くんの声だけが響いていた。
『…お前には似合わねえよ、そういうの。
俺は、俺のワガママに付き合ってくれる
お前がいいんだけど？』
『なぁ、それって、相手オトコ？』
『俺より大事な用事の相手って、オトコなんだろ？』
須田くんはどうしてあんなに怒ったような言い方をしたんだろうか。
わたしのことを居酒屋要因だと言っておきながら、まるで、わたしが他の人のところに行くのを嫌だと言っているように感じられるような言い方。
須田くんのことがもうよく分からないよ。
どうせ、わたしのことなんて……、
好きじゃないくせに……。
どうしていつまでも、
わたしを縛り付けるようなことを言うの？
もやもやと黒くて汚い感情が、
自分の中を駆け巡っていく。
その時だった。
『Aちゃんっ！』
「え……あ……、」
後ろから両肩を支えるように掴みながら、
ジェジンくんがわたしの顔を覗き込んでくる。
はっと我に返ると、さっきまで聞こえてきていたフロアの騒々しさが戻ってきて、自分がボウリング場にいることを、思い出した。
『どうした？投げないの？』
「あ……、そうだよね、投げなきゃ、」
投げたボウルは、勢いがなく見事にガーターで。
「ア……アハハ…、ガーターだったっ、」
取り繕うように、ジェジンくんに
笑ってみせたけど、なぜかジェジンくんの
顔は笑っていなくて。
「次こそはストライク取らなきゃね！」
『Aちゃん、』
「んー……？なに？」
『何かあった？』
ドキン、と大きく胸が跳ねる。
「え？な、何もないよ？どうして？」
何も無かったかのように、
ボウルリターンに、ボウルを取りに行く。
『本当に？』
「本当だよ、」
『じゃあ……なんで？』
「……え？」
『なんでそんなに、泣きそうな顔してるの？』
わたしは思わず、
持っていたボウルを落としそうになる。
だって……
全部ジェジンくんの言う通りだったから。
大丈夫なわけがなかったんだ。
＊
続く
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moco(プロフ) - のりこさん、初めまして！もこと申します！コメントありがとうございました、嬉しくて泣きそうです(TT)いつも誤字脱字が多すぎてすみません。頑張って更新しますのて、また読んでいただけると嬉しいですです！ (2018年3月10日 23時) (
レス) id: 09d7dc74fa (このIDを非表示/違反報告)
のりこ - お話ができる度に楽しみに読ませて頂いてます (2018年3月10日 21時) (レス) id: 9972616781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：moco | 作成日時：2018年1月29日 19時
