恋する理由【Nino】 (ページ9)

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9:ご主人様ページ9

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冷たく冷えたボトルの水は、酒で焼けついたのどを通り

悲しみで冷え切った胸の奥を、さらに冷たくしめつける。

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でも、もう泣かない。

泣くだけ泣いた。

しかも知らない・・・いや知ってるけど。

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会ったばかりの男の前で

一応、アイドルの前で

泣きながら吐いたんだから、もうやめよう。

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のどをウグウグ鳴らして飲み干す。

そんな私を眺めながら、横で胡坐をかいてるカズは

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和「お前さぁ…(笑)」

「ぁによ・・・」

和「・・・いやなんでもない(笑)」

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眉間を指でかいて笑いをこらえていた。

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和「まぁ、よろしくどうぞ」

「こちらこそ・・・おねがいします」

和「明日からビシバシだからな。俺、お前のご主人様。わかる？」

「ごしゅ・・じんさま・・・？」

和「そっ。寝起きする場所も、食も与えてやるから」

「だから？」

和「俺の言うことを、聞くこと」

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「・・・やっぱりなんか変なことする気なんだ(泣)」

和「もぅ・・・・・まじでお前さ」

「なによ」

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和「絶好調超がつく、空前絶後のバカだわ」

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バカじゃない。

バカじゃない。

この男が言うみたいなバカじゃない。

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悔しいけど、本当なら行き場をなくして

都会のどこか隅っこで、どこまでも落ちて落ちる夜だったはずだった。

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でも今の私は、あったかい部屋で、バカバカと言われながらも

一人じゃない夜を過ごせる。

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誰かの存在を感じられる。

それが本当に嬉しかった。

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和「ベッドがゲロ臭くなんのやだから、今夜はお前ここね」

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リビングに乱暴にカズが布団を敷いてくれるのを、黙って見ていた。

何か言葉を口にしたら、なんかわからないけどまた泣きそうだったから。

口には出さないアリガトウを心で呟いて、その夜は眠った。

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