恋する理由【Nino】 (ページ28)

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28:そばにいたい　ページ28

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何があったの？

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そう聞くには、私たちはまだ距離がたりなくて

私はただ黙って、言葉を探して黙り込む。

やがてカズは重いため息をつきながら起き上った。

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和「わりぃけど俺、先寝るわ」

「あ・・・うん」

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寂しげな横顔のまま、背中で手を振りながら部屋に消えていく。

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「おや・・・すみ」

私の声だけが小さく、残されたリビングに響いた。

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片づけを終えて、チラリとカズの部屋の方を見る。

そのままリビングの電気を消して自分の部屋に戻った。

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時計の針だけが静かに進んでいく。

新しい年の時間が進んでいく。

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ベッドに入っても心がざわざわして眠れなかった。

寝る、って言って部屋に消えたのは言葉に困った私のせいかな。

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目を閉じても、何度寝返りを打っても

カズのことばかり頭に浮かんで

心がギュゥギュゥと苦しくなる。

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本当は何か抱えたままの

今ひとりぼっちで部屋にいる

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カズのそばに、いてあげたい。

そう思った。

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そっとベッドから抜け出して、カズの部屋へと向かう。

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真っ暗な中、隙間から細く洩れるオレンジの灯り。

いつもなら、パタンと閉まっているはずのドアが
ほんの少しだけ開いていた。

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そっと息を潜めて覗いたドアの隙間から

キーボードの前で丸めるカズの背中が見えた。

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ならない鍵盤をひとつひとつたどる、白い指。

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声をかけぬまま、ただ見つめていると

カズは一度その指の動きを止めてから

長椅子の右端に体を少し動かす。

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ゆっくりと息を吸ってから、近づいて

その隣にそぉっと腰を下ろした。

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