恋する理由【Nino】 (ページ13)

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充電した記憶も、そもそもいつバッグから携帯を出したかも覚えがなかった。

机の上に転がってたギターのピックを、ブラインド越しの日差しに翳す。

ギター弾けるのかな。

弾いてって頼んだら弾いてくれるかな。

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そんなことをぼんやりと想いながら通話ボタンを押した。

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『あぁ・・・生きてた(泣)』

当人よりも途方に暮れた声でそう言ったのは、同期のゴンﾁｬﾝだった。

お爺ちゃんが権三(ゴンゾウ)で、そこから名前をもらって

”権太”にされたゴンﾁｬﾝは名前そのままにがっちりとした体格をしてる。

入れ替わりの激しい会社、残ってる同期で仲がいいのはゴンﾁｬﾝだけだ。

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「ゴンﾁｬﾝおかえりー」

『はぁ？ったく、おかえりじゃないよ。出張から戻ったら、辞めてるし。
挙句とんでもないことなってるじゃんかよ』

「辞めるのはもともと決めてたのを前倒ししただけじゃん」

『だとしても、スキルアップのために退社する、ってのと。
横恋慕してた男ができちゃった結婚したショックで突然の退社、じゃ
月とスッポンだっての』

「・・・横恋慕ってなに」

『社内中にそういう話が流れてる』

「でも・・・だって、付き合ってたのはっ」

『タケダのやつ、お前じゃなくてあの女とずっとつき合ってたことになってるよ。
２年間』

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誰が広めたのかわからない話でも

事実云々がどうだろうと

ナオトがもう、否定もせずにいることが

自分よりもあの女を守ることなんだと

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心にゆっくりじわじわと刺さる痛みを感じながら

気づかされた。

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