【恋うた】Disc 1 (ページ9)

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ショキ、ショキ……

心地よい音と共にだんだん頭が軽くなっていく。

鏡の中のKさん(スタイリストさんのこと。店名とエプロンにKの字の刺繍が入ってるからさっき命名した。)をじーっと見てると、両側の長さを確認するためなのか、鏡に目線を移した彼とぱったりと目があった。

そしたらまたにこっと目を細めた。

一瞬キュンときちゃって、すました顔で笑顔を返す。

何なのこの緊張感…おかしいな俺。

「この髪色、大丈夫ですか？」

ずっと無言のまま作業を進めてるKさんが突然切り出したのがこの一言。

「え？」

「校則反してませんか？けっこう明るい色でしたね」少し伸びたんですがって。

……認めたくないんだけど、この聞き方はもしかして…

「あのう…僕、26歳なんです」

「ほえっ？！」
Kさんはかなりの衝撃を受けたようで、口元に手をあてた。

何そのうぶな反応！めっちゃ可愛いんだけど！
てか“ほえ”ってなんだよ！可愛すぎかよ鳴き声(？)が！！

「申し訳ございません。てっきり近所の高校生かと思ってました…」

「大丈夫ですよ。それ、よく言われてます。いまだにコンビニで年齢確認されますもん」

自虐的なことでKさんを笑わせた。
有岡さん、可愛い顔してますもんねって、肩を揺らして笑った。

いやいやあなたに言われても。そっちこそ仕草がいちいち可愛いんだよKさん…

「前髪切りますので、目瞑ってくださいね」
言われた通り目を閉じて、目の前に人の気配が回ってきた。

ショキ、ショキ…

前髪が指で挟まれ、ハサミを入れるたびに聞こえる摩擦音が近くなった。

26歳ですか…ギリギリ同い年ですね、とKさんが呟く。

「へぇ？」思わず目を開けると、思っていた以上に近いところにKさんの顔があった。

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