【恋うた】Disc 1 (ページ45)

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「お前体調悪いじゃねえの？いつ来た？大丈夫？」
本当に心配してそうな表情で近づいてきたので、気まずくなってそむけた。

「伊野尾？」

「まあ～この子仮病だってよ、俺もさっき聞いたけど」
黙ってると光が代わりに返事をした。

…言いたくもないのに、光め！

「ぷは、なんだよ仮病かよ！いつも真面目なのにな、伊野尾は」
不貞腐れて薮を見ないようにしてたけど、後ろから髪の毛をわしゃわしゃされて苛ついて、ついに

「やめろよ！俺犬じゃねえ！」

と、薮を睨みつけて怒鳴った。

そしたらいたずらした煩わしい手がピタッと止まって、目が合った瞬間意外なことに、薮が笑顔を見せた。

「やっとこっち向いてくれた。」薮の手が目の前まで伸びてきて、そして俺の前髪をぽふぽふと撫でて、「新しい髪型いいじゃん、かわいいよ」って…

ドキッ。

え…何で…胸がまたぎゅうと締め付けられたように苦しくなった…

顔が熱い。今絶対赤くなってる。
そう思った瞬間隠せるために俯いて、顔をマフラーに埋めた。

「…うるさい、別に可愛くない…」

「たまには素直になれよいのちゃん～俺の兄貴の力作だぜ？可愛くないわけないっしょ！まぁ座れよ、いつまで突っ立ってんだ！」助け舟を出すつもりなのか、光は大して弾まないこの会話にすんなりと入り込んで、そして話を逸らした。「てか薮お前弁当は？持ってきてねえの？」

「あっ、そうだ忘れかけてた。さっき廊下でチームの先輩たちとばったり会って、弁当奪われた」

「はぁ？どういうこと？」

「なんか昼にミーティングやってるらしい、お前もたまには出ろ！ってさ」薮は手を合わせて、頭を下げた。「ごめん、今日はそっちいくわ、でないと俺飯食えねえから笑」

「なにそれ笑、まぁいいよ、行ってきな？昼休み終わっちゃうぞ」

「うん、行ってくるわ…伊野尾、お前体調不良じゃないなら部活ちゃんと顔出せよ？」

俺が頷いたのを確認すると、満足そうに薮は“じゃあ後でな！”と言って急ぎ足でまたドアを通り抜けた。

可愛いって、初めて言ってくれた。

他の人に言われるとムカつくのに、薮のその何気ない一言にドキドキしちゃって、抑えられない。

心臓が爆発しそう。
惚れた弱みって、こういうことかな…

柄にもない乙女チックなことを思いながら、呆然とドアの方向を見つめてると、

「良かったね」

って、後ろから光の穏やかな声。

振り向いたら、優しく微笑んでいる光と目線が合った。

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