【恋うた】Disc 1 (ページ42)

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「いのちゃんってさ、」

「ん…？」

「お父さんお母さん、髪型とかうるさいほう？」

その日は光と2人で日直で、放課後の教室で学級日誌を書いてると唐突にそう聞かれた。

「なんだよ急に」

「いや、ぜんぜん弄ってないから、親が厳しいかなーって」

「別に厳しくはないよ、校則守ってるなら何も言わないと思う。俺がそういうの興味ないだけ」

「本当？！じゃあさ、今週末とか空いてる？」

「ほぇ？…まぁ、用事はないけど…」

たしか土曜日は他の高校と練習試合やる予定だっけ…本格的じゃないからマネは来なくてもいいと言われたから今回はパス。たまには家でゴロゴロしたいんだもん。

なぜかそれを聞いて光の顔がパッと綻びた。

「じゃあ、たまには俺ら2人で遊ばない？」

週末は薮と光と映画だったり勉強会(と言うより光のための補習に近い)だったり、3人で過ごしてること多いけど、確かに光と2人で遊ぶのが今までなかったかも…まぁ、光だったら全然いいけど、

「いいよー映画でも見る？」

「ううん。あのね、いのちゃんを連れてってあげたいとこあるの！」

「…はい？」

「とりあえず9時迎えに行くね！」

「9時？！早くない？！どこも開いてないっしょ？！」

「いいからいいから♪」

その時、詳しく聞かないまま流された自分をぶん殴りたい。

土曜の朝、光に連れて行かれたお店の前で、本気でそう思った。

「……俺、帰る。」

「いやダメに決まってんじゃん！まあまあ～とりあえず入ろっか！」

背中を押されてむりやり入ったのは、雰囲気がおしゃれなヘアサロン。
普段ぜったい入らないから変に緊張するけど…なにしろここに連れてきた理由がさっぱりわからない。

しばらくすると、光にそっくりな美容師さんらしい人が来た。

「よっ、来たかチビすけ！…本当に可愛い子連れてきたな！こんにちはー」って、光の頭をわしゃわしゃしてから俺にも挨拶をしてくれた。

美容師さん、もとい光のお兄さんが何らかの準備をしてる間にやっと説明してくれた。

どうやら今日、俺はカットモデルとして連れられたようだ。

ちょっと待てよ…

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