10 ページ14
.
「信じらんない…今までいのちゃんとなに話してたの?」深くため息をついて、知念 はテーブルに身を乗り出した。「見て分かるでしょう?店にくるお客さんそんなにいないし、来たとしてもお金取らないお年寄りさんだったり、サロンだけじゃ食っていけないよ」
「…言われてみれば、確かに…」
「Salon K.はほぼ副業だよ、いのちゃんにとっては。暇つぶしって言ったら人聞き悪いけど、そんな感じで…心の拠り所?的なことだから」
「はぁ…」
謎だらけだ。謎が多すぎてどこから聞けばいいかわからない。
「美容系の勉強ももちろんしたけど、いのちゃんはちゃんと大卒だから、成績もトップでね」
「……ちなみに、お二人どこ大ですか?」
「M大。ちなみにいのちゃんは建築専攻。」
うわ、名門じゃん…しかも理系。
あのルックスで頭もいいんだ、けいさんは…
ひょっとして天使じゃなくて神さまなのかな……?
お店にちょこんと飾ってある、ずっと趣味かなと思ってた模型は、実は大学時代の作品だとか、時々見かける外出帰りに背負っている黒い筒は図面が入っているとか、知らなかったことを知念が少しずつ教えてくれた。
「図面…?」
「うん、知り合いの先輩の事務所で手伝ってる。バイト感覚…って言っても家賃とかは主にそっちでカバーしてるよ」
「そんなに?!」
「あなたが思ってる以上に優秀だからね」
ぐぅ…
もう、分かったから…釣り合わないの分かったから…そこ強調しないでくれ…
「でもさ、儲けてもないのになんでサロン続けるの?普通に建築士として働けばよくね?」
俺の素朴な質問に、知念の顔は一瞬で暗くなった。
「…資格持ってないんだよ、いのちゃんは」
「へえ?」
「正確に言うと、試験受けてないから。それこそ“コーちゃん”って人が原因で」
「…どういうこと?」
知念は残りのミルクティーを一気に飲み干して、“本来なら僕が話すことじゃないんだけど…”って少しためらいながらも教えてくれた。
「さっきも言ったけど、いのちゃん大学時代本当に優秀で、大学院行くことも考えてたし、教授の紹介でつながった事務所からのオファーももらって。卒業する前に試験受けて、資格取得して、そのまま就職したはずだけど…試験の日、彼は会場に行ってなかった。」
知念の話によると、その日、試験中のはずのけいさんから突然電話がかかってきて、戸惑いながら出てみたら、電話の向こうにいたのはなぜか空港のスタッフさんだった。
.
253人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yoku(プロフ) - ずみさん» 温かいお言葉をありがとうございます!涙出るほど嬉しいです(;_;)メンバーそれぞれの個性に沿って、言いそうな台詞を考えるのが個人的に楽しいです(笑)いつも亀更新で本当に申し訳ありませんが、これからも楽しんでいただけますように頑張ります:) (2021年6月7日 22時) (レス) id: df50adfb63 (このIDを非表示/違反報告)
ずみ - どんな人物も個性溢れる長編ですし、ストーリーもとても面白いです。読めば読むほど夢中になって、もらい泣きでもする寸前でした。素敵な作品をありがとうございました! (2021年6月5日 23時) (レス) id: 88ff7ddfb4 (このIDを非表示/違反報告)
yoku(プロフ) - みーさん» ま、まさかフォローしてるライターさんからコメント頂けるとは…!とっても励みになります!ありがとうございます!みーさんの作品をいつも拝読させていただいてますのでみーさんも頑張ってください:) (2021年6月4日 23時) (レス) id: d95cf3f703 (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 切なくて毎回泣きそうになりながら読んでます。素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしてます。 (2021年6月3日 22時) (レス) id: 163ee9ceaf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yoku | 作成日時:2020年1月5日 0時