短編集『恋日記。』【Ｎ】 (ページ18)

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顔を固定されているわけでもないのに、

彼のその視線から逃れられないのは、何でなんだろう。

こんな綺麗な顔を至近距離で見せられるなんて、一体何の拷問なんだ。

「和也…、」

「……。」

「‥、…くん。」

勇気を振り絞って呼んでみたものの、

彼の顔を見ながら呼び捨てなんてやっぱりできなかった。

両手で顔を覆って俯くと途端に静寂が訪れる。

彼のことだから何か言ってくるだろうと思っていたのに、

何も言ってこないから、不思議に思ってそっと顔を上げると。

「‥見んな。」

「ぁれ…？」

顔を上げた先にあった彼の顔を見てみると、耳が赤く染まっていた。

手持無沙汰なのか癖なのか、若干気まずそうに顎を触っている。

‥もしかして。

「照れてる？」

「‥照れてねぇよ。」

「でも、耳真っ赤だよ？」

「暑いんだよ。」

「今日、雪降ってるよ。」

そう言うと、ﾁｯと舌を鳴らして顔を逸らす。

初めて見る彼の姿。

「ふふ…、」

新たな一面が見れて、すごく嬉しい。

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