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*和也side*
男の理性の脆さを知らない彼女は、
やっぱり不思議そうに首を傾げる。
何もしなくても綺麗な肌とか。
ほんのり桜色に色づいてるほっぺたとか。
黒目が大きな瞳とか。
それを縁取るように生えてる長い睫毛とか。
彼女の全部が、俺を誘って仕方ない。
まぁそんなこと、この人が考えてるはずもないんだけど。
「ねぇ。」
「は、はい。」
「何で敬語なのよ。」
目が合うのが恥ずかしいのか、
俯いて顔を上げようとしない彼女は、緊張した声色で返事をする。
窓から射し込む夕日が、彼女の横顔を照らす。
桜色の頬はほんのりと赤く色づいていて、
照れているのが手に取るように分かる。
「いつになったら、あなたは俺のこと名前で呼ぶの？」
「え？」
予想外の言葉だったのか、彼女は驚いたようにぱっと顔を上げた。
「名前…？」
「そう、名前。」
「呼んでるよ？」
“何か間違ってる？”と、
不思議そうに言う彼女に半分呆れてしまう。
「そろそろ下の名前で呼んでくれませんかね？」
「‥む、無理！」
「何でよ。」
「だ、だって！…。」
「だって？」
ただ下の名前で呼んでって言っただけなのに、
茹でダコみたいに顔赤くして何て言うのかと思えば。
「は、恥かしい、から…！」
「はぁ？」
ﾎﾞｿﾎﾞｿと小さな声で発せられた言葉は、
恥ずかしい、という理由だった。
本当この人は、学習能力が無いっていうか何ていうか。
恥ずかしいとか、そんな理由で俺が納得するワケないのにね。
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作者名：和音
| 作成日時：2019年1月27日 13時
