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「じゃあ年下とか抜きにどうなんですか？ Aちゃんは」
「え？ ……うーん」
「結構素直だし揶揄うとかわいいですよね。表情がコロコロ変わって」
確かに、一見無愛想に見えるけれど案外表情豊かだ。喜んだり怒ったり、拗ねたり。こちらの言葉にくるくる変わる表情は、きっと本人が自覚している以上に素直で可愛らしい。
それに、世話焼きというか心配性というか、仕事で疲れている俺を気にかけてくれたりもする。
「ま、中島の歴代の彼女にはいないタイプか」
「ちょ、俺が遊んでたみたいな言い方やめてくれる？ 菊池こそ遊んでただろ？」
「中島さんには負けますよ」
「お前、そういうのあの子の前で言うなよ？」
「あの子ってどなたです？」
「あの子はあの子だよ、」
A、と口からこぼれ落ちそうになって慌てて噤んだ。目の前では菊池がにやにやと楽しそうに笑っている。嵌められた。
「とにかく！ Aは勝利や聡ちゃんと同じかわいい後輩なの。困ってたら助けたりアドバイスするのは先輩として当たり前だろ」
「そうですね。俺もかわいい後輩だと思ってますよ」
「だろ！？ そういうこと」
そう言ってよく焼けた肉を一枚口に運んだ。うまい。いつまでもカルビが食える身体でいたい。話は終わり、と黙々と肉を食べる俺を見て菊池が呆れたように笑った。
菊池は俺とAをくっつけたいようだけど、一緒に住んでる男にそんな感情を抱かれたらAが安心して家に帰れないじゃないか。成人しているとはいえ、年下の女の子なのだ。彼女が新しいマンションを見つけて出ていくまでは守ってあげなければ。
……そういえば、その肝心のAから連絡がまだ来ない。
スマホを確認しても新着のメッセージは届いておらず。時刻はもうすぐ21時になるところ。まぁ、心配するにはまだ早い時間ではある、けども。
「どうしました？」
「いや……。菊池、2軒目行こう、2軒目！」
「え。はい」
菊池が「俺明日も仕事なんですけど」という表情を一瞬浮かべながら頷いた。俺は気づいていないふりをしてお会計をお願いする。一人で帰ったらソワソワしてしまうに違いないから、今夜はもう少し飲んでいたかった。
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作者名：ハル | 作成日時：2024年1月11日 16時
