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……なんだか馬鹿にされているように感じる。
ビールグラスを持ってにやにやと笑う茶髪の彼を、思わず眉を顰めて見てしまう。こんな人いたっけ。最初の自己紹介を思い返してみるも、ぼんやりと聞き流していたせいで名前なんて思い出せなかった。
「ねえ、つまらなそうだね」
「……そんなことないです」
「絶対嘘じゃん。俺の名前も覚えてないでしょ？」
笑いながらそう言い当てられて、う、と動きが止まる。それを見た茶髪くんはほらみろと楽しそうに笑った。いいように遊ばれている。初期勝利とはまた違った感じの悪さである。
ほぼ金色に近い明るい茶髪に、首元にはなんだかごつめのネックレス。グラスを持つ手にはリングが光っている。整った顔立ちにそれらのアクセサリーは似合っているけど、私には居心地の悪さを感じさせた。人を見た目で判断してはいけないというけれど、ちゃらくて怖い。こんな場じゃなかったら話すことなんて無かったのに。
運ばれて来たゆずはちみつチューハイを受け取って一口飲む。その間も茶髪くんは私を眺めて、何が面白いのか笑いながら唐揚げをつまんでいた。帰りたい。
「アンタは男捕まえにいかなくていいの？」
「人数合わせで呼ばれたので」
「ってことは、彼氏がいるんだ」
「……」
「佐藤と松島と一緒にいる女ってアンタだろ？ 2人ともキープしてんの？」
「はあ？」
彼氏がいないというのは悔しいけど嘘はつけず、黙っていればそんなことを言われた。思わず顔を向けると相手がにやにやと楽しそうな表情を浮かべた。
「2人はれっきとした友達です」
「大体そういうのって水面化でごちゃごちゃしてたりするじゃん。どっちかとキスした？」
「してません」
「じゃあどっちのこと好きなの？ 佐藤？」
「好きじゃないです」
名前を出されたのが勝利で良かった。はっきりと言い切ると茶髪くんは少しつまらなそうな顔をした。
どこぞの学部の誰と誰が付き合ったとか、浮気してたとか取られたとか、そういう噂はたまに耳にする。皆がみんな聡くんのように優しくないし、勝利のように誠実でもなくて、下心を持っていて。私が思っているよりもそう言った出来事は起きていて、私たちもそんな目で見られているということも分かっている。なんせ、聡くんと勝利は目立つのだ。
それでも、馬鹿にされると腹が立つもので。へらへらと笑う顔を睨むと、茶髪くんはますます面白そうな顔をした。
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作者名：ハル | 作成日時：2024年1月11日 16時
