君の瞳に恋してない 2nd【Kento.N】 (ページ18)

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このまま真っ直ぐ帰って中島先輩と普通に話せる自信が無くて、先輩のマンションまで歩いて帰ってみることにした。大体一時間くらいで着くはずだし、夏祭りに行くと話してあるから多少遅くなっても先輩も気にしないだろう。駅を通り過ぎて、ナビアプリを確認しながら夜道を歩く。夜になっても外は暑く、じわじわと汗が浮かんだ。

　勝利には今日の事ちゃんと話しておかないとだめだよな。休みいつなんだろ、もうバイト終わったかな。

　聡くんは彼女さんと無事会えただろうか。そういえば何があったんだろう、夏休みだからサプライズで会いに来たとか、そういう急用であると良いけど。

　色んな事を考えながら歩いていると、ポケットに入れていたスマホが震えだした。LINEかな、と取り出すとロック画面に中島先輩の名前が表示されている。

「もしもし？」

『もしもしA？まだお祭り？』

　急に屋台の唐揚げ食いたくなってさー、知ってる？角の屋台のとこ。といつものテンションで話し出した先輩に、申し訳なく思いながら帰り道である事を伝える。もう少し早く言ってくれたらお使いしたのに。

『ダメ元で電話してみたけどやっぱ遅かったか。……んで、Aは今どこ？』

「今ですか？ ……どこだろ？」

『はあ？』

「歩いて帰りたくなって。大学の最寄り駅を少し通り過ぎた所です」

『ひとり？』

　先輩がそう尋ねる。まずい、怒られるかも、と思いつつも嘘はつけず「そうです」と小声で返せば、電話口から小さなため息が聞こえた。

『今から行く』

「ええ？大丈夫ですよ、まだそんなに遅くないし」

『Aが大丈夫じゃないだろ。電車で行くから駅まで戻って待ってて』

　絶対待てよ！なんて言われてしまい、私の夜のお散歩は終了してしまった。言いつけ通りに大学の最寄駅まで戻り、中島先輩が来るのを待つ。お祭り帰りの人が駅へ消えていくのを何組も見送った頃、改札からスウェット姿の先輩が歩いて来た。

「中島先輩。すみません、わざわざ」

「ん。コンビニ寄っていい？」

　先輩がスタスタと駅の外へ歩いて行く。慌てて後ろを追いかけてコンビニの中へ入ると、先輩は一直線にアイスコーナーへと向かって行った。