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「でもAと健人くん、仲良くなったよね。この前も２人で江ノ島行ったんでしょ？」
「家事してくれたお礼に、ってだけだよ」
「それでも２人でお出掛けするなんて仲良しじゃん！ ６人で集まる時もさ、なんか良いコンビだよね」
ふわふわと嬉しそうに笑いながら聡くんが言う。この前の飲み会の帰り際の話なんてしたら大喜びしそうだ。
「夏休みもさ、６人で遊ぼうね。僕川遊びしたい」
「川かぁ。私花火したいな」
「花火いいじゃん！」
「川行くなら海もかな？」
「そういえば勝利免許取れたのかな」
「来月頭に試験って言ってたよ」
ぽつりぽつりと会話をしていく。夏休みにしたいこと、バイトの話。夏祭りの賑わいとは別に、私と聡くんの周りだけ穏やかな時間が流れているようだった。
「……今日勝利とも話してたんだけど、いい加減部屋探ししないとだよね」
「え？ まぁ、いつまでも健人くんの家ってわけにはいかないか」
「よく考えたらやっぱり迷惑だよねぇ」
私は居心地がいいと思っていても、先輩の方はそうではないだろう。仕事で疲れているのに、帰っても他人がいるなんて。
「やっぱり早いこと出ていかなくちゃだよなぁ……」
「でも、だからって安さ重視で決めるのはダメだからね？」
「聡くんも勝利みたいなこと言うね」
明日からまたアプリチェックを再開させないと、と考えていると、聡くんが慌てたようにそう言った。オートロック無しの物件はそんなに罪なのか。
「もし万が一、健人くんが出ていけーって言ったら、僕の家に来たらいいよ」
へら、と笑いながら聡くんがそんなことを言った。「あ、でも健人くんがそんなこと言うなんてあり得ないと思うけどね！？」と慌てながら付け足された言葉は、さらりと右から左へと消えていく。
「……聡くんの家は、駄目だよ。私が聡くんのこと好きだから」
「へっ？」
聡くんの動きが止まる。表情が抜け落ちて、ただ呆然とこちらを見ている聡くんに思わず笑ってしまった。やっぱり気付いてなかったんだね。
「１年生の時から好きなんだ。ごめんね」
「え、っと……」
「僕、」と聡くんが何かを言いかけた時、スマホの着信音が鳴り響いた。どうやら聡くんのスマホらしく、ロック画面を見て困った表情を浮かべた。
「大丈夫、出なよ」
「……ごめん」
聡くんが小さく謝ると立ち上がって離れていく。ちらりと見えた画面には、聡くんの彼女の名前が表示されていた。
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作者名：ハル | 作成日時：2024年1月11日 16時
