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聡くん宅でやいやい言いながらお昼ご飯を作って食べ終え、そのまま３人揃って雑魚寝をした。私の恥じらいも試験勉強疲れには勝てず、一番最初に寝落ちた勝利に釣られて私と聡くんもいつの間にか眠ってしまった。
スマホのアラームの音で飛び起きて、３人揃って寝ぼけ眼のまま聡くんのマンションを出た。夕方になってもまだまだ暑くて、歩いているだけでじんわりと汗をかく。
「今年も人多いねえ」
「賑わってるね」
神社の入り口に辿り着けば、立ち並ぶ露店とたくさんの人。試験終わりの大学生が楽しそうにお店に並んでいる。
「え、何食べる？ 僕ねぇ、焼きそば！」
「ベビーカステラ！」
「俺りんご飴食べたい」
見事に希望が３つに分かれた。とはいえ、このお祭りの醍醐味は食べ歩きなので、順番にお店を眺めていくこととする。
「あそこの唐揚げ屋さん美味しいよね、いつもいっぱい並んでるとこのさ」
「美味しいよね！ あそこは並びたい」
「たこ焼きも食べたい」
「そんなに食べれる？」
あれこれと食べたい物を挙げていれば、隣を歩いていた勝利がふと立ち止まった。「……電話だ」とスマホを取り出すので、人に揉まれながら道の端へ避難する。
「もしもし……。え？ 今日ですか？」
スマホを耳に当てて通話を始めた勝利が、珍しく焦った声を出す。なんだか不穏な空気に私と聡くんはそっと視線を合わせた。嫌な展開になりそうな気がする。
「……すぐに行きます、すみません」
そう言って通話を切った勝利は、私たちに申し訳なさそうな表情を浮かべてこちらを見た。「ごめん、今日バイトだった」
「え、マジで！？」
「忘れてた？」
「すっかり忘れてた。ごめん、行ってくる」
両手を合わせて勝利がそう言うと、そのまま慌てて神社の出口の方へ走っていく。勝利がシフトを忘れるなんて珍しい……と２人揃って後ろ姿を見送り、そのまま２人顔を合わせた。なんとも言えない空気が流れる。
「行っちゃったね」
「行っちゃったね。……どうしようか」
夏祭りは楽しみにしていたから、このままお祭りを回りたい。けど、聡くんは気まずくないかな。２人きりはあんまり良くないかな。「帰る？」と明るく提案しようとして、一息早く聡くんが「ベビーカステラ並ぼうよ」とにっこり笑った。
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作者名：ハル | 作成日時：2024年1月11日 16時
