・ 006 ページ9
.
学校でよくある、朝の読書の時間。
私は本屋でテキトーに買った陽だまりの彼女っていう本を読んでいた。
確かこれ映画化されたっけ。人気のアイドルグループの人と人気の女優さん。
この時期に合ってるなぁ、なんて思いながら読み進めていた私は、考えもしなかった。
この本がきっかけで、松村くん、と、仲良くなるなんて。
『トイレ行ってくるね』
休み時間、前の席の美波にそう告げて本を机の上に放置したままその場を立ち去った。
トイレから出て教室に戻れば、私の机の所に誰かが座っていた。
『松村くん…？』
松村｢あ、おかえりー｣
『なにやってんのーって、松村くんこの本知ってるの？』
松村くんが本を手に取って表紙を眺めてたから知ってるんだって嬉しくなった。
だから思わず喋りすぎちゃって。
『これ、少し前に映画化されてたの。知ってる？』
松村｢あー、うん。…映画、見に行ったから。｣
その顔を見てハッとした。
きっと、元カノと見に行ったんだ。
切なそうな顔で言う彼に、やらかしたって思えばパッと顔を上げて私を見上げてきた。
なんだそのわんこみたいな顔。
その顔は切なくなんてなくて、ただ笑顔だった。
松村｢この本好きなの？｣
『まぁ、(テキトーに選んだ割に)かなり好きだよ』
松村｢じゃあ、話し合うかも。嬉しいな。｣
あっ、って何かを思いついたように私の机の中をゴソゴソと漁り始めた松村くん。
化学のノートを取り出したかと思えば私の許可なく筆箱まで開けて空いてる白いページに文字を書き始めた。
綺麗でわかりやすい字が私のノートに連なる。
松村｢この本知ってる？｣
『“ウルルの森の物語”？』
松村｢そう。おすすめ。陽だまりの彼女好きだったらきっと好き。｣
普段なら、そっかで終わっちゃうのに、その日は違かった。
『うん、これ読み終わったら読んでみる。』
松村｢うん、感想、待ってる。語ろう｣
嬉しそうに笑った笑顔につられて私も笑った。
その笑顔が、彼女さんに向けていた笑顔と同じだったって気付いたのは、ここ最近のこと。
この時色んなことに気づけていれば、今までこんな思いはしなくて済んだのかな。
松村｢あの時は趣味が合う子と出会えた！ってただ嬉しかったんだよね｣
『うん』
松村｢きっと、そこからだったんだと思う｣
時計の針を進めること、今ならできるかな。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 392人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つばさ(プロフ) - 今、こういった低評価で悩まされてる作者様が増えています。とても面白いのであまり気にせず更新して欲しいです。ちなみに７つめの原石…も読ませて貰ってます！七瀬様のペースでご無理なく！ (2021年9月3日 16時) (
レス) id: a84a28701a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七瀬
| 作成日時：2021年9月3日 0時
