２４４：予感的中 〜S〜 ページ39
樹里さんの予感は的中で。
「あ！また間違えた！」
緊張して震える手でペンを走らせる。
「A？ちょっと落ち着こうか。」
頭をポンポンしてやり、紅茶を淹れてあげる為に立ち上がる。
「ねぇ、翔くん？もう２枚しか予備ないよ？」
「大丈夫。ゆっくり書こ？」
「うん。」
「それにいざとなったら訂正印で済むし。」
紅茶をセットしながら、冷蔵庫からプリンを出す。
「イヤ！それは絶対イヤ！」
「何で？」
「なんか失敗した婚姻届出すなんて…結婚生活も失敗ばっかしそうで。」
小さい声でボソボソ言うA。
「そんな事ないでしょ？」
トレーに乗せたプリンと紅茶を持ってリビングに戻る。
「はい、おいで。」
Aの隣に座り手を広げると、俺の首に抱きつくからそのまま持ち上げて膝の上。
プリンのパッケージを剥がして、一口ずつ食べさせる。
「今日のはいかがですか？姫？」
「美味しいよ？ありがと。」
俺にチュッてする。
「はは。プリン味。」
「美味しいでしょ？」
「あぁ…A？」
「うん？」
上目遣いで俺を見上げて首を傾げる。
「あぁ〜もぉ可愛い。」
頬にチュッてする。
「ん？」
あ、そうじゃなかった。
「結婚生活の中でさ？失敗なんていっくらでもあるよきっと。普通に考えて５０年は一緒にいるんだし。」
「うん。」
「二人で乗り越えればいいじゃん？」
「…ん。」
「Aが俺と結婚した事自体が失敗だったって思わない様に努力はしますよ。」
軽く笑って冗談混じりに言う俺をジッと見て、
「私もだね。」
って。
「ううん。Aは今のまま可愛い笑顔で、俺に甘えてればいいんだよ。」
「ふふ。そっか。」
「Aのお父さんにも言ったけど、Aを甘やかすのが俺の生きがいだから。」
「変な生きがい。」
やっぱり『ふふ』って笑いながら言ったAにチュッてして、
「さて、姫？続きを書きましょ。」
ペンを渡す。
「はい。今度は間違えないぞ！」
そう言って俺の膝から下りようとするから、
「いいじゃん。このままで。」
ってAのお腹に手を回す。
「うん。じゃぁ、後ろから見守ってて？」
「あぁ。」
Aが婚姻届の名前の欄に自分の名前を書き始めた。
明日の朝には、Aの名字の『相葉』の欄が…
『櫻井』に変わる。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
