２４２：待ちわびて ページ37
え？それだけ？
って思える程にあっさり言った翔くん。
お父さんもお父さんで、
「そうか。」
だけ…。
えっとぉ…？？
「って事でA？帰ろう。」
「え？！」
もう？？
こんな簡単でいいの？
戸惑ってると、既に立ち上がってる翔くん。
「翔、待ちなさい。話さないとならない事はまだあるだろう？」
「んだよ？」
普通の父親と息子ってこんな感じなのかな？
うちのお父さんと雅紀は仲がいい方なのかな？
「Aさんの親御さんには？」
「もちろん昨日オッケーもらってきた。んで、こっちから挨拶行くって言ったら『顔合わせの食事会はどうか』って。」
「こっちはもらう方だし、そちらがそれでよければな。式はするのか？」
「あぁ。とりあえず６月予定。まだ何も決まってねぇけど。」
お父さんの普段はわからないけど、翔くんの態度と言葉使いは私に対するのとは全く違ってて、少し面食らう。
お父さんと翔くんの淡々としたやり取りを見てたらお母さんがお茶を運んで来た。
「あ、お構いなく。」
会釈をすると、
「ふふ。やっと会えたわ。待ちわびてたの。」
って弾んだ声が聞こえて。
「A？帰ろう。」
翔くんが私の腕を引っ張る。
「いいじゃない。翔が初めて本気で好きになった女の子ともっとお話ししたいわ。」
「しなくていい。てかする話しもねぇだろ？」
「いっぱいあるわよ〜。ねぇ？Aさん？」
「はぁ。」
こ、怖い…
何を聞かれる？
「ねぇ？翔みたいな男どこがいいの？家事もできない、部屋は汚い、優しくない。まぁ私に似て顔は少しは見れるけど。」
「おい！」
翔くんが焦って怒鳴った。
でも、親には全然平気みたいで。
「ねぇ？うちのね、次男。まだ学生だけど翔なんかより優しいし、男前だし。そっちになさいよ。」
え？？本気？？
にっこり笑ってるお母さんに何て答えたらいいかわからなくて。
「誰がやるかよ！Aは俺の嫁さんになんだよ。」
「あら、そんなのAさんが決める事でしょ？あんたみたいな思いやりの欠片もない男なって直ぐ捨てられるわよ。」
翔くんを適当にあしらって私に、
「あ！いい人いるからお見合いしてみない？Aさんなら引く手数多よ。」
って嬉しそうに言う。
これって…
やっぱり翔くんに私が相応しくなって事かな？
お母さんは反対なんだろうか。
その事がショックで目頭が熱くなる。
「おい！いい加減にしろよ！何、A泣かせてんだよ！」
翔くんが私を引き寄せて怒鳴った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
