２４１：おぼっちゃま ページ36
うちに挨拶に行った次の日に、翔くんの実家お邪魔した。
家を見て唖然、呆然。
「翔くんって…お坊っちゃま？」
「え？そんな事ないだろ？」
何で今まで、翔くんの家の事が気にならなかったんだろ？
翔くんのお嫁さんになると言う事は、翔くんのお家の人間になるって事で…
勝手に普通の家庭の息子だと思い込んでいた。
翔くんは自分の家の事を必要最低限にしか言わなかったし。
お父さんは公務員。
お母さんは先生。
「ねぇ？翔くんてさ…？」
ハッとして恐る恐る聞く。
「うん？」
「もしかして幼稚園とか小学校からずっと同じ学校？」
「あぁ、そうだけど。」
なんて事ない様に平然と言ってのけた翔くんがインターホンを押した。
ーはい。
「あ、俺。」
それだけ言った翔くんの腕を引っ張る。
「ねぇ！聞いてない！」
「何が？」
「こんなお坊っちゃまなんて聞いてない！」
「別にそんなの関係ないだろ？」
ちょっとムッとした顔を私に向ける。
「でも、私なんかつり合って『それ以上言ったら俺、マジで怒るよ？』」
低い声で威嚇する様に言われて…
俯く私の頭をポンポンとした。
「大丈夫。俺が好きになったコを悪く言う様な親じゃないよ？それに俺にとってはAが世界で一番。ね？」
って優しく諭す様に翔くんが言ったら玄関のドアが開いた。
翔くんが先に中に入る様に私を促して、中に入った私の隣に立つ。
玄関先には妹さんによく似た女性。
「こんにちは。相葉Aと申します。」
とだけ挨拶してお辞儀をする。
「こんにちは。どうぞお上がり下さい。」
とだけ言われ頭を上げると、翔くんが既に靴を脱いで上がっていて、優しく微笑みながら私に手を差し出している。
私も靴を揃えて脱いで素直にその手を取った。
「親父は？」
「リビングよ。」
「言ってあるんだろ？」
「もちろん。お待ちかねよ。」
『ふふふ』って笑ったお母さんであろう人に、手土産を手渡してから、翔くんに手を引かれてリビングであろう部屋に入る。
「親父。」
たった一言。
「あぁ。お帰り。」
「ただいま。こちら相葉Aさん。」
私を紹介してくれて。
「初めまして。相葉Aと申します。」
またまた深くお辞儀。
「初めまして。翔の父親です。」
顔を上げると柔らかく微笑んでいてくれていた。
「A、ここに座って。」
翔くんに言われて座ると、
「俺、今月の２５日に入籍するから。」
って淡々と翔くんが言った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
