２３７：テンション 〜S〜 ページ32
あぁ〜…マジで…
足震えてる…
インターホン押す指も震えてる…。
ギュッと目を瞑り…
ギュッとAの手を握り…
深呼吸を一回。
『よし！』って、自分に気合を入れて震える指でボタンを押した瞬間…
「翔ちゃん！待ってたよ！！」
勢いよく開いた扉の向こうに満面の笑みの雅紀くん。
「ちょっと！雅紀！びっくりするじゃない！」
唖然とする俺の隣でAが大きな声で怒ってる。
「翔ちゃん！頑張ってね？俺は翔ちゃんの味方だかんね？」
「雅紀！無視すんな！」
「もぉ！Aはうっさい！俺は翔ちゃんに用があんの。今日は翔ちゃんの晴れ舞台なんだから！」
「うっさい！バカ雅紀！」
目の前で繰り広げられる兄妹ゲンカ。
あんなに緊張してた自分をバカらしく思ったり。
「雅紀！A！玄関先でいい加減になさい。すいませんね、櫻井さん。どうぞお上がり下さい。」
って玄関まで来てくれたお母さんに言われる。
「はい、お邪魔します。」
Aと共に玄関に上がり靴を揃えてお母さんに、
「あ、これケーキです。Aさんからこれが好きと伺ったもので。」
ってケーキの入った箱を渡す。
「まぁまぁ。気を使ってもらっちゃって。」
と、言いつつも嬉しそうなお母さん。
やっぱりAのお母さんかな？なんて思ったり。
「翔ちゃん？親父がお待ちかねですよ？」
味方してんのか、プレッシャーかけてんのかわからない雅紀くんはニカって笑って、後をついて来る様に促す。
一歩一歩、お父さんがいるであろう部屋に近づきながら深呼吸を繰り返す。
「親父！翔ちゃん来たよ。」
何の緊張感も無くドアを開けた雅紀くん。
「そうか。入ってもらえ。」
「うん。翔ちゃん？どうぞ？」
ドアの前で待つ俺を振り返り、完璧他人事だと言わんばかりにニカって笑って言う雅紀くん。
あぁ…この人は本当に…
ただの冷やかしじゃぁなかろうか。
「失礼します。」
一歩部屋に入って頭を下げる。
「翔ちゃん、ここ座って。」
お父さんの向かいのソファを指差して、自分はお父さんの隣に座る。
「雅紀はいいでしょ？自分の部屋に戻りなさいよ！」
俺もその方が助かるしやり易いかも。
「イヤだね〜。翔ちゃんが何て言うか気になるし、俺も色々と…ね？」
その面白そうな顔…どうにかならない？
雅紀くんだけこの場の空気にマッチしてないテンションだよね…。
「櫻井さん？どうぞ座って？」
お茶を運んできたお母さんにそう言われ、ソファに腰を落とした。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
