２３４：譲れない事 ページ29
旅行から帰って来てから社内では注目の的で。
けど、直ぐにお正月休みに入ったお陰でもあって、どうにか逃げられた。
今日は翔くんと一緒に大掃除。
私が窓を拭いていると、床を磨いていた翔くんが、
「家はどうする？引越す？」
って思いついた様に聞いてきた。
プロポーズされてから、いつ両家に挨拶に行くか、式はどうするか…
話し合う事はたくさんあって。
「ん〜…私は子供できるまでここでもいいけど。」
二人の生活には何にも不便は感じない。
「そっか。Aがいいなら俺もそれでいい。」
翔くんはいつもそう。
私が常に優先。
そんな翔くんだけど、入籍日だけは絶対に譲れないらしい。
窓も拭き終わり、時計を見ると１５時を過ぎていて。
「翔くん？休憩にしよ？大体終わったし。」
「あぁ。」
洗面所で手を洗い戻って来た翔くんが、
「今日の夕飯はAの生姜焼きがいい。」
って言ってキッチンにいる私を後ろから抱きしめる。
「え？また？たしか一昨日も…。」
「そうだけど。食べたいの！」
子供の様に駄々をこねる。
「ふふ。わかりました。じゃぁお茶が終わったらお買い物行こ？」
「うん。」
私のうなじにキスをして、お茶の乗ったトレーを受け取りリビングに運んでくれた。
・・・アイドルが司会の今年の紅白を見ながら翔くんとお蕎麦を食べる。
「ね！翔くん！今から初詣行こうよ！」
思いつきで言った私に、
「はは。いいですよ、姫？ただ、寒いからいっぱい着込んで行こう。」
そう言って頭をポンポンしてくれる。
「うん。」
「そんな嬉しいの？すっごい嬉しそうな笑顔。」
「うん。」
頷く私の頭を撫でて『可愛い』って一言。
立ち上がりお蕎麦のどんぶりをサッと片付けて、着替える為に寝室へ向かう。
何を着ようかとクローゼットを開けて悩む。
「A？格好よりも防寒。」
って悩む私を後ろから抱きしめて言うけど…
「でも…でもじゃありません』」
クローゼットの中から翔くんが私に服を出して、手渡す。
「せっかくのお正月が寝正月になったらイヤでしょ？」
「うん。そうだけど…。」
「大丈夫。Aは何を着ても可愛いよ。」
って頬にチュッてする。
「ふふ。ありがとう。」
お返しにチュッてして、上着を脱ごうとしてふと気づく。
「翔くん？着替えるからちょっと出てて？」
「え？今更…。」
「イヤ！恥ずかしいの！」
「はいはい。」
そう言って翔くんは寝室から出て行った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
