２３３：有名な 〜MIKA〜 ページ28
ずっとどことなく元気がなかったAさん。
社内でも有名な皆が憧れるカップル。
そんなAさんと櫻井さんが『別れた』と噂になったのは、それから直ぐの事だった。
櫻井さんに好意を寄せる女の子は浮き足立ち、Aさんを狙ってた男の人は好機を伺ってる様だった。
そんな二人が今日は揃ってお休み…
しかもクリスマスイブ。
その事が社内でまた噂に…。
私はいてもたってもいられなくて。
「二宮さん？」
昼休みに喫煙所にいる二宮さんに声をかけた。
「あれ？どうしたの？こんな所で珍しい。」
「はい…あのぉ…。」
勢いで来てみたのはいいけれど、実際聞いてもいい事なのだろうか？
「ん？何々〜？俺の夜のお相手希望？」
「はっ？！ち、違います！」
「ククク。すっげぇ焦りよう。」
からかわれた！
「もう！」
「大丈夫よ？」
「え？」
「お姉さんの様に慕ってるAさんの事でしょ？」
何で？何でわかるの？
何なの、この人。
唖然と二宮さんを見てると、また『クク』って軽く笑って。
「明日、揃って幸せのご報告聞けんじゃない？」
「え？それって…。」
「うん。そういう事。」
にっこり笑った二宮さんの笑顔が、あまりに眩しくて卒倒しそうになった。
「あ、まだ内緒ね？」
「はい。じゃぁ別れては…。」
「ないよ。翔さんがAさんを離す訳がない。」
「そっか。よかった。」
小さな呟きだったはずなのに、二宮さんには聞こえてたらしくて。
「今日さ？Aさんの誕生日なんだって。」
「え？今日って…イブがですか？」
「うん。翔さんこの日にプロポーズするってずっと前から決めててさ。」
「そうだったんですか。」
「ちょっとすれ違っちゃったみたいだけど、大丈夫だよ。」
今度は柔らかく微笑む。
…この人、危険人物だわ。
「はい。ありがとうございました。」
早く立ち去ろう…
うん。それがいい。
・・・次の日、二人は一緒に出勤してきて。
Aさんの左手の薬指には、Aさんによく似合ってるダイヤの指輪が輝いていた。
「おめでとうございます。」
って言うと、ふんわりとした優しい笑顔で、
「ありがとう。」
って言ってくれた。
そして、二人が婚約したという噂は半日も経たずして社内に知れ渡った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
