２３２：幸せな誕生日 ページ27
翔くんの逞しい腕に包まれて、久しぶりに感じる翔くんの体温を全身に受け止める。
翔くんの肩越しには、薄暗い部屋の頼りない光の中でもキラリと光る指輪が見えて。
「A。」
「…ん？起きてたの？」
「…あぁ。眠れないんだ。」
「そっか。私も。」
私を抱きしめたまま横向きの身体をゴロンと仰向けにして、私を自分の上に乗せた。
「…なんかさ？」
「ん〜？」
ピッタリと翔くんの胸に頬をくっつけて…
でも視線は目の前にある指輪のままで。
「寝て起きたら、今日の事が夢の出来事だったんじゃないかって…。」
「ふふふ。」
「何だよ。笑う事ねぇじゃん。」
怒ってる様でも翔くんも笑って言う。
「あんなカッコよくプロポーズしてくれたのに、やっぱりヘタレさん？」
「『やっぱり』って…。」
「ふふ。大丈夫よ？」
「何が？」
あ、ちょっといじけてる。
「夢じゃないよ？」
「ん？」
「私は翔くんが大好きよ？」
「…あぁ。」
抱きしめられる腕にギュッと力が込められる。
「ずっとずっと一緒にいるよ？」
「あぁ。」
「翔くん。」
「ん？」
「私も…翔くんを愛してるよ。」
私がそう言ったきり、私には翔くんの胸の音しか聞こえなかったけど。
『はぁー』ってため息が聞こえた。
「ん？」
「Aはいっつもズルい。」
「そ？」
「Aばっかり何かいつも余裕で…俺なんてAを好きになってから余裕なんて全く無いのに。」
子供の様にいじけて言う翔くんが可愛いくて。
「拗ねないの。」
クスクス笑いながら言って、翔くんの胸に顔をくっつけたまま、翔くんを見上げると唇が尖ってて。
尖ってる下唇を親指と人差し指で摘まんでみる。
「何だよ〜。」
視線だけ私に向けた翔くん。
「カッコいいお顔が台無しよ？」
「Aが治してよ。」
「どうやって？」
「ん？もちろん愛情いっぱいのキスで。」
「それだけで治る？」
唇をトントンってしながら聞くと、
「ん？どうだろ？」
ゴロンと転がり私と翔くんの身体の上下を入れ替える。
「ふふふ。」
「今日はやけに素直に受け入れてくれるね？」
「ん？今日はずっとくっついて…繋がってたい。」
翔くんの頭に手を回して、自分に引き寄せてキスをする。
唇を離しても、鼻と鼻はくっついたまま翔くんの目をジッと見つめる。
「こんな幸せな誕生日は初めてよ？ありがとう。」
「来月の俺の誕生日はもっと幸せかな？」
返事の代わりに翔くんにキスをした。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
