２３１：幸せな涙 〜S〜 ページ26
花束ごと俺の腕の中に収まるA。
「ずっとずっと…俺だけのAでいて？」
あぁ〜…
こんな時にも独占欲丸出しな俺ってカッコ悪い。
「A？泣いてばっかいないでさ？ちゅぅしよ？」
「…ん。」
返事をしたものの、一向に顔をあげないA。
「A？」
「…ちょ…まっ…て。」
ヒックヒックとしながら、途切れ途切れに話す。
「はは。そんなになるまで泣くなよ〜。」
「だっ…て。」
Aの身体を少し離して、花束を受け取りテーブルに置く。
「ほら、おいで？抱っこしてあげる。」
ギュッと俺の首に抱きつくから、そのまま抱き上げて膝に乗せた。
「A？そろそろちゅぅしてくんないかな？」
「ん…。」
「俺、我慢の限界突破して無理やりしちゃうよ？」
俺の首筋から顔を上げたAが、チュッて軽いキスをくれる。
至近距離で見えたAの顔は、キャンドルの灯りだけでもわかる程に涙に濡れていて。
「はは。マジで泣きすぎ。」
親指で涙を拭ってやる。
「幸せな涙だよ？」
「ん？」
「翔くんが大好きで…とっても幸せな涙。」
「そっか。ならいいや。」
ふんわり柔らかく笑うAに俺も幸せだよ？ってキスをする。
「身体も冷えちゃった事だしお風呂入ろうか？」
「うん。抱っこ。」
そう言って俺に抱きつく。
「今日はやけに素直だね？」
「うん。今日はずっとくっついてる。離れたくない。」
「そっか。かわい。」
抱きついてるAの側頭部にチュッてして、立ち上がる。
「翔くん？」
「ん〜？」
「素敵な誕生日ありがと。」
「ふふ。どういたしまして。お礼は後でいっぱいもらうから。」
「…うん。」
服を脱ごうとAを下ろすと、
「翔くん？指輪外さないと。」
って左手を差し出す。
「ダメ。お揃いのつけるまで外さないで。」
「でも、水に浸けたら『いいの』」
強い口調で言うと、もうそれ以上は言わなかった。
服を脱ぎ捨て、湯船の中で後ろからAを抱きしめる。
「ねぇ？あのお花ってもしかして？」
「あぁ。色々と融通してもらった。」
「…そっか。」
「一緒に住んでると、サプライズを考えたり用意したりが、なかなか…な？」
「そうだね。」
Aのうなじに顔を埋めると甘いいい匂い。
「ちなみに今日プロポーズする事は皆知ってる。」
「え？皆？」
「あぁ、例の皆。」
「え！」
びっくりするAに『もう俺限界』とだけ言って湯船から抱き上げた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
