２２６：お腹いっぱい 〜S〜 ページ21
「やっと…やっと触れた…。」
自分でもなんつぅ情けない声出してんだって笑えるけど、そんなのはもうどうでもよくて。
情けないヘタレな俺でも、きっとAは受け止めてくれるって信じてて。
久しぶりに俺の腕の中にいるAをギュ〜ッて抱きしめて、Aの首筋に顔を埋める。
Aの甘い香りを胸いっぱいに吸っていると、ゆっくりとAの腕も俺の背中に回って。
「A…？」
「…ん？」
「俺を信じてくれて…ありがと。」
それだけ言うと抱きしめる腕に力を込める。
Aの身体が震えて、泣いてるのが身体越しに伝わってきて。
「泣くなよ。泣くのはまだ早い。」
「…ん？」
「ふふ。何でもないよ。」
背中の腕を頭に持って行きゆっくり撫でる。
う〜ん、何か違う。
少し身体を離すと、涙目のAが俺を見上げていて…
「やっぱり、俺とAはこうでしょ？」
って言って膝の上に抱き上げる。
「ふふ。抱っこ久しぶり。」
「だな。」
「うん。」
「ねぇ？俺さ？もういい加減Aギレ。」
「うん？」
キョトンとした顔で俺を見つめて、少し首を傾げて。
「かぁいいなぁ。」
頬にチュッてする。
「ふふ。ありがと。」
Aも俺の頬にチュッてする。
「でさ？充電してもい？」
「ん〜？ダァメ。」
「何で？夕飯までまだ時間あるしさ？」
「お風呂入りたくなっちゃうしね？」
あぁ〜そういう事…
「じゃぁ？」
「ん？」
「２週間分、ちゅぅしよ？」
にっこり笑って頷いたAに唇を重ねた。
夕飯の時間まで、今までの時間を取り戻す様に抱きしめ合ってキスを繰り返す。
「翔くん？私、もうお腹いっぱい。」
「ん〜？俺はまだまだAが足りないけど？」
「唇腫れちゃうよ。」
「はは。大丈夫でしょ。」
「ううん。大丈夫じゃないし、ご飯の時間。」
「 はいはい。」
Aを膝から下ろして、手を握り食事処に向かった。
この後、車を運転する予定がある俺はアルコールを呑めなくて、Aには勧めたけど俺が呑めないならと二人でノンアルコールで乾杯をした。
部屋に戻ったのが２０時…。
あと４時間がとてつもなく長く感じるし、少し緊張してきた。
「翔くん？」
「ん？あ、何？」
「携帯鳴ってるよ？」
「あ、あぁ。ありがと。」
上着のポケットに入れっぱなしの携帯を手に取るとメール。
『健闘を祈る！』
ってニノからのメールだった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
