２１６：ソース ページ11
翔くんが渋々リビングに戻る。
「翔くん？顔怖いから。」
ふにゃふにゃ笑う大野さん。
樹里は悪阻がキツイらしくて実家に戻ってるみたい。
雅紀の彼女も友達と呑み会。
「翔ちゃん？抱っこ許可するから、その怖い顔どうにかして？」
「んふふ。お兄ちゃんからオッケー出たしいいじゃん。」
「…あぁ。」
まだちょっとふてくされてビールをゴクゴク呑み干してる。
「二宮さん？ソースはケチャップとウスターソースのミックスでもいいですか？」
うちのハンバーグのソースは、焼いたハンバーグから出た肉汁でケチャップとウスターソースを合わせたもの。
「A？俺の好きなのにしてよ。」
まだ少しむすっとしてる翔が私の方を向いて言った。
「いいよ。Aさん。翔さん好みで。」
苦笑いの二宮さんがベランダから戻って来て翔くんの隣に座った。
「わかりました〜。」
フライパンからお肉を取り出し、付け合わせが乗せてあるお皿に移してソースを作る。
「あ、いい匂い。」
声のした方を見ると鼻をクンクンさせている様子の大野さん。
「ふふ。ホント大野さんて言動が可愛いですよね。」
「んふふ。そ？」
「いいおっさんが『可愛い』って言われて喜ぶなや。」
二宮さんに突っ込まれてもふにゃふにゃしてる。
ソース作り終わって、ハンバーグの上にかけて出来上がり。
「はい。お待たせしました。」
リビング移動して、テーブルの真ん中にお皿を置いて翔くんの隣に座る。
「A、抱っこ…。」
「ご飯食べてからでいいでしょ？」
お互い食べづらいじゃない。
小皿にハンバーグを乗せて翔の前に置いた。
「どうぞ？翔くんのリクエストでしょ？」
「…うん。」
頷いて、箸を持った。
「翔ちゃん、今度は落ち込んでる。」
「ほっときましょ？Aさん？俺もいい？」
「オイラも！」
「どうぞ？」
小皿に取り分けて渡す。
「雅紀は？」
「もちろん食うよ。」
「そう。」
雅紀には小皿だけ差し出す。
「お前…普通俺にも皿に乗せてくれるだろうよ。」
「自分でどうぞ。」
「翔ちゃん？こんなんだよ？やっぱり考え直したのがいいんじゃない？」
そんな事言った雅紀に俯いたまま、視線だけ向けて、
「俺にはそんなんじゃないし。」
ってやっぱりどこかいじけた様にボソッと言う。
「んふふ。相当ご機嫌ナナメ。」
「そんなに抱っこしたいんすか？」
「あぁ。」
面白くなさそうに低い声で返事をした。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年7月29日 22時
