１３３：『ただいま』 ページ8
皆が帰った後、片付けと掃除をしてうちに向かう。
私は駐車場を契約してないから、先に翔くんが自分の荷物を持って私を送ってくれて、翔くんはもう一度家に戻って電車で来る。
「んじゃ、後でね？」
「ん。気をつけてね？」
私の一言に微笑んだ翔くんがチュッてキスをして、頭をポンポンして玄関を出て行った。
翔くんを見送って、ベッドに座り一昨日の夜からの事を思い返してボーッとする。
何だか、色んな事が一度に起こって…。
暫くボーッとしていて、ふと視線をずらすと、クローゼットの前に掛けた翔くんのスーツが目に留まる。
そうだ…
翔くんの家に引越しするんだ。
そう思って荷造りしようと思って立ち上がる。
でも、何から手をつけたらいいのか…。
とりあえず冬服？
あ、やっぱりキッチン用品？
部屋の中をぐるぐる回って、あっちこっちしてたら翔くんが帰って来て部屋に入って来た。
結局、何も片付いてないし…。
「おかえりなさい。」
「ん。…ただいま。」
翔くんがギュッと抱きしめてくれて…
「どうしたの？」
「ん？これからずっとずっとAの『おかえり』が聞けると思ったらすっげぇ嬉しくて。」
「そっか。翔くんのが早い日もあるんじゃない？」
同じ部署でも仕事内容違うし。
「よっぽどじゃない限り、一緒に帰るからAが『おかえり』って言ってね？」
「うん。」
「で？どうして部屋の真ん中で突っ立ってんの？」
「ん？何かね？どこをどう荷造りしたらいいかわからなくて。」
「はは。そっか。とりあえずさ？不用品は引き取り処分頼んだから。」
「え？」
誰に？どこに？
今はリサイクル料とか分別とか色々うるさい。
「篤斗って覚えてる？」
「…ん？」
イマイチ顔と名前が一致しない。
裕太さんはわかる。
「はは。そっか。」
わかっちゃったかな。
「んでね？その篤斗がそういう業者と繋がりあって格安でやってくれるって。」
「そっか。何だか悪いね？」
「いいんだよ。使えるモノは使わないと。」
『はは』って笑って頭をポンポンしてくれる。
「とりあえず、電化製品も家具もいらないよね？」
「俺のでいい？」
「うん。全然。」
「じゃ、今日は終わり。」
そう言ってベッドに座る。
「おいで？」
優しく微笑んで私に手を差し出す。
素直にその腕の中に収まると、ギュッとしてくれるから私も抱きついて『好き』って呟く。
「あ〜も〜…可愛いなぁ。」
そう言って腕に力を込められた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
