１６３：立候補 ページ38
「何々〜？」
真弓の大声に周りに群がる人達。
「ん〜？Aにね？彼氏いるらしんだけど、詳しく教えてくれないの。」
「マジで？それって不倫とか言えない関係？」
「そ、そんな訳ないでしょ？」
焦って言い返してると、
「ねぇ〜、今ねすっごいカッコいい人とすれ違った！」
ってトイレからでも帰ってきたのか興奮気味にそう言った友人。
「え？！私も見たい！」
って口々に言う女の子達。
はっきり言ってさほど興味のない私は黙ってビールを煽る。
「な？相葉ってマジで彼氏いんの？」
カッコいい人で盛り上がる女の子を尻目に、私の隣に座りそう言った斎藤くん。
「うん。」
「えぇ〜マジで？俺、立候補しようと思ってたのに。」
「斎藤くんてば酔ってんの？」
今まで一度もそんな事言った事ないじゃない。
「酔ってねぇ〜よ。今日さ？久しぶりに会って綺麗になってたから不覚にもドキッてときめいてしまいまして。」
「ふふふ。ありがと。」
「…っ//」
顔を赤くして俯く斎藤くん。
「なぁ？マジでダメ？」
ジョッキを握ってる私の手の上に自分の手を重ねる斎藤くん。
「あぁ！斎藤がAを口説いてる〜。」
どうしてこうも酔っ払いは大声なのか。
全員が私と斎藤くんに注目。
「手まで握ってんだから告ったれ斎藤！！」
悪ノリしだす酔っ払い達。
「うっせぇなぁ。俺は真面目に口説いてんだからほっとけよ。」
「さ、斎藤くん？」
「どうしてもダメ？」
手を更に強く握って、私の目をジッと見て言う斎藤くん。
「大好きな人がいるの。」
「俺にはその人越えられない？」
「多分ね。」
私の中で翔くんはすっごく大切な人で大好きな人。
「そんな事言われても諦めらんない。」
そんな事を言う斎藤くんを、皆が囃し立てる。
もぉ…どうしよう…
斎藤くんもお酒が入ってるせいか強引だし。
「悪りぃけど、諦めてくんね？」
聞き覚えのある声のする方にパッと振り向く。
背後にある仕切りに腕を預けてそう言ったのはなぜか眼鏡している翔くんで。
「あ、さっきのカッコいい人だ。」
友人がそうボソっと言ってるのが聞こえて。
翔くんはつかつか私の元に来て、
「いつまで俺の女の手を握ってんだよ。離せ。」
って斎藤くんの手を振り払い、睨んで低い声でそう言った。
まだ状況が理解できない私はその光景を呆然と見るしかなかった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
