１６１：一応ね 〜N〜 ページ36
土曜日の夜に珍しく翔さんに誘われた。
奢ってくれるって言うし？
タダでビール呑めるし？
しょうがないから、女との約束をキャンセルして指定された店に行ったのよ。
そしたら、仕切られた空間に３０人くらいの団体客。
ニノちゃん、一瞬で理解しましたよ。
Aさんは同窓会か、クラス会の類でこの店にいてそれを監視するって訳ね。
店の一番角の一番目立たない場所で、一応変装しているつもりなのか眼鏡をしている翔さんが、チラチラそちらの様子を伺ってる翔さんを発見。
てかね？俺直ぐ気付いたし、その眼鏡は変装に何も役立ってないから。
「翔さん？何でそんなに躊躇してんの？はなっからそのつもりあるんだったら、もう決めちゃえば？」
「躊躇はしてない。」
「だったら…。」
心配症で、ヤキモチ焼きで、独占欲が強いあんたは、そうする事によって少しは余裕生まれんじゃないの？
「プロポーズする日は決めてる。」
「はいはい。お得意のサプライズですか？」
「そんなんじゃ…ねぇけどな…。」
そんなんでしょうよ。
あんたは。
言い淀んだ翔さんが、ジョッキを持ってビールを流し込んだ瞬間、
「翔ちゃぁ〜ん。」
って大声が聞こえて翔さんがビールを俺に向かって吹き出した。
「ちょ！翔さん！勘弁してよ！」
急いでおしぼりで顔と服を拭く。
「あはは。ニノきったねぇ〜。」
無邪気に笑ったその人。
「ま、雅紀くん？！何で？」
「え？今日ね、ニノと野球で呑みに誘ったら翔ちゃんと呑むって言うから俺も来た。」
悪びれる事もなくニカって笑う相葉さん。
「てかね？お宅の妹ちゃんに変な虫が付かない様に監視だって。」
盛り上がってる団体客の方を指差す。
その方向を身体を左右に動かしながら見る相葉さん。
「あぁ。アイツら大学のサークル仲間じゃない？」
「雅紀くん！目立つから座って！」
翔さんが相葉さんのシャツを引っ張る。
素直に座った相葉さんが店員にビールと唐揚げを２皿頼む。
俺と相葉さんが話してる間も、翔さんの視線は団体客の方。
てかさ？仕切られてるから見えないじゃん。
「翔ちゃん？大丈夫だよ。Aそんなにモテないよ？」
軽く笑いながら言う相葉さんを鋭い目つきで見て、
「Aはどの女よりも可愛いんだよ。」
って低い声で言う。
こっえぇ〜。
相葉さんもビビってる。
ねぇ、翔さん？
相葉さんって、こんなんでも一応Aさんのお兄様。
そこんとこ忘れてない？
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
