１６０：ニノにお願い 〜S〜 ページ35
「なぁニノ…ちょっとお願いあんだけど。」
喫煙所でタバコを吸いながら、いつ言おうかタイミングを計ってた事をニノに告げる。
夏休みも終わり、日中はまだまだ残暑が厳しいけど、夜風は大分秋めいてきた９月中旬。
「何すか？」
「明日の土曜日って空いてる？夕方からでいいんだ。」
「明日？珍しいですね。いつもならAさんと一日中イチャイチャしてるでしょ？」
少し目を細めながら紫煙を吐くニノ。
「まぁ…な…？」
「否定しないんだ。」
フッて軽く笑ってタバコを灰皿に押し付ける。
「んで？ニノちゃんに何のお願い？言っときますがね？ニノちゃん結構モテますんで、土曜日は引っ張りだこなんですよ？」
「んなの、わかってんよ。」
「わかってて？」
「あぁ。」
俺だってカッコ悪いし本当はこんな事頼みたくない。
大野くんでもよかったんだけど、多分、樹里さんと会うだろうし。
「そこまでわかってて、何のお願いですか。」
「あのさ？ちょっと付き合って欲しいんだ。」
「…どこに？」
俺の真意を伺う様にジッと真っ直ぐ俺を見る。
「呑みに。」
「なんだ、そんな事？もちろん『奢らせて頂きます』」
安心した様に笑ったニノはもう１本タバコを取り出す。
「ねぇ、翔くん？オイラは〜？」
突然背後から声がして、ニノと同時にパッと振り向く。
そこにはいつものふにゃふにゃ顔の大野くん。
「大野くんは樹里さんと会うんじゃないの？」
「うん。だから樹里ちゃんも。」
「ダメ。Aいないし。」
「えぇ〜。残念。」
眉を下げて本当に残念そうな顔をして胸ポケットからタバコを取り出す。
「翔さん？場所はどこっすか？」
「あぁ、もう決まってるから。」
「そ？んじゃ詳しくはメールして下さい。」
「あぁ。」
・・・「翔さん？どういう事っすか？」
店の一番目立たない所に座っていたらニノが来た。
「どうって…？」
「おかしいと思ったんですよ。土曜日の夜に俺を誘うなんて。」
全て悟ったニノが呆れた様にため息を吐きながら俺を見る。
「まぁ、とりあえず座れよ。ビールでいいだろ？」
「ったく。心配症、過保護…。」
何とでも言ってくれ。
心配なモンは心配なんだよ。
「しょうがねぇだろ？Aは可愛いから心配なんだよ。」
「はいはい。もうさ、とっとと自分のモンにしちゃえば？」
「ん？」
「そうすれば少しは安心できんじゃない？」
ニノがメニューを見ながら何でもない事の様に言った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年6月21日 14時
